目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第10話 白崎先生の秘密

昼休み。

俺はまたしても白崎先生のことが気になっていた。


「ねえ、ひかり。白崎先生のこと、もう少し調べてみようと思う」

「いいね!手分けして情報を集めよう!」


俺たちは放課後、先生が職員室を出るタイミングを見計らって尾行することにした。

ところが——


「……お前ら、何してんの?」


突然、背後から声をかけられた。

振り向くと、そこには腕を組んだ風間が立っていた。


「えっ!? いや、その……ちょっとした調査?」

「はあ?」

「佐倉くん、言葉選びが下手すぎる!」


ひかりが慌ててフォローしようとしたが、風間はジト目で俺たちを見てくる。


「……お前ら、また変なこと考えてるだろ。どうせロクなことにならねえんだからやめとけ」

「いやいや、これは重要な調査なんだって!」

「はあ……まあ、どうせ止めても聞かねえんだろ?」


風間は面倒くさそうにため息をつくと、ポケットから小さな紙袋を取り出した。


「……カフェ行くけど、いるか?」

「え?」

「新作のチョコスコーン、今日から発売らしい」


まさかの甘党ムーブ。

このタイミングでカフェの話を振ってくるとは思わなかった。


「え、気になる! けど、今は調査が……」

「なら、ついでに調べりゃいいだろ」

「……確かに!」


というわけで、俺たちは風間と一緒にカフェへ向かった。

白崎先生のことを調べるはずだったのに、なぜかスコーンを食べる流れになっているのは気のせいじゃない。


「……で、お前らは何を調査してるんだ?」

風間がブラックコーヒーを飲みながら訊いてきた。

俺は少し悩んだが、どうせなら協力してもらうのもアリかもしれない。


「実は——」


俺たちは風間に、白崎先生の不審な言動について話した。

すると、風間は少し考え込んでから、ポツリとつぶやいた。


「……そういや、前に先生が変な奴と会ってたな」

「え?」


俺とひかりは同時に顔を上げる。


「確か、夜の公園で。スーツ姿の男と何か話してた」

「それって、どんな感じの話?」

「……さあな。ただ、"対象は順調に適応している"とか言ってた気がする」


適応?

まさか——


「……チョイ能力のことか?」


俺の言葉に、風間は無言でコーヒーをすする。

何かを知っているのか、それともただの偶然か——


俺たちの"チョイ"な日常が、静かに大きく動き始めようとしていた——。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?