昼休み。
俺はまたしても白崎先生のことが気になっていた。
「ねえ、ひかり。白崎先生のこと、もう少し調べてみようと思う」
「いいね!手分けして情報を集めよう!」
俺たちは放課後、先生が職員室を出るタイミングを見計らって尾行することにした。
ところが——
「……お前ら、何してんの?」
突然、背後から声をかけられた。
振り向くと、そこには腕を組んだ風間が立っていた。
「えっ!? いや、その……ちょっとした調査?」
「はあ?」
「佐倉くん、言葉選びが下手すぎる!」
ひかりが慌ててフォローしようとしたが、風間はジト目で俺たちを見てくる。
「……お前ら、また変なこと考えてるだろ。どうせロクなことにならねえんだからやめとけ」
「いやいや、これは重要な調査なんだって!」
「はあ……まあ、どうせ止めても聞かねえんだろ?」
風間は面倒くさそうにため息をつくと、ポケットから小さな紙袋を取り出した。
「……カフェ行くけど、いるか?」
「え?」
「新作のチョコスコーン、今日から発売らしい」
まさかの甘党ムーブ。
このタイミングでカフェの話を振ってくるとは思わなかった。
「え、気になる! けど、今は調査が……」
「なら、ついでに調べりゃいいだろ」
「……確かに!」
というわけで、俺たちは風間と一緒にカフェへ向かった。
白崎先生のことを調べるはずだったのに、なぜかスコーンを食べる流れになっているのは気のせいじゃない。
「……で、お前らは何を調査してるんだ?」
風間がブラックコーヒーを飲みながら訊いてきた。
俺は少し悩んだが、どうせなら協力してもらうのもアリかもしれない。
「実は——」
俺たちは風間に、白崎先生の不審な言動について話した。
すると、風間は少し考え込んでから、ポツリとつぶやいた。
「……そういや、前に先生が変な奴と会ってたな」
「え?」
俺とひかりは同時に顔を上げる。
「確か、夜の公園で。スーツ姿の男と何か話してた」
「それって、どんな感じの話?」
「……さあな。ただ、"対象は順調に適応している"とか言ってた気がする」
適応?
まさか——
「……チョイ能力のことか?」
俺の言葉に、風間は無言でコーヒーをすする。
何かを知っているのか、それともただの偶然か——
俺たちの"チョイ"な日常が、静かに大きく動き始めようとしていた——。