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第9話 チョイ能力、覚醒?

次の日、俺は朝から落ち着かなかった。


(俺の能力って、本当は"チョイ"じゃないのかもしれない……)


白崎先生の言葉が頭から離れない。

いつもなら深く考えないようにして流すのに、今回はどうにも気になってしまう。


学校に着くと、ひかりがすでに待っていた。

「おはよう佐倉くん!昨日の実験の続きをやろう!」

「えっ!?いや、昨日のは実験にならなかっただろ!」

「そうだけど!でも、"読まれたことに気づかれないようにする"っていうの、試してみたいじゃん!」


ひかりは目を輝かせながら俺を見つめてくる。

「……分かったよ」

俺は軽くため息をつきながらも、昨日の続きを試すことにした。


「じゃあ、まずは目を合わせるぞ」

「うん!」

ひかりと目を合わせる。


(……佐倉くん、昨日なんであんなに慌ててたんだろ?もしかして、私のこと……え、そんなわけないか。うん、ないない。でもちょっと気になるな……)


「うわあああ!!!」

「だから何!?今の流れで叫ぶ要素ないでしょ!?」

「ちょっと黙れ!思考がうるさい!!」

俺は顔を覆った。昨日に続いて、ひかりの考えがダダ漏れすぎる。


「えー、何考えてたのか気になるなぁ~」

「知らん!」

「じゃあ次、"読まれたことに気づかれないようにする"のを試してみよう!」

「お前、もう少し恥じらいを持て!」


俺は半ば強引にひかりの提案に乗ることになった。

(……よし、今度こそ"読まれたことを悟られない"ようにしてみよう)


目を合わせ、相手の心を"静かに"読むイメージを持つ。

すると——


(……あれ?)

俺は驚いた。今までのように"相手の思考が勝手に流れ込む"のではなく、"自分で選んで"読める感覚があった。

まるで、ドアの前に立ってノックするような……そんな感覚だ。


「……できた?」

「……たぶん」


俺はひかりの目をじっと見つめたが、彼女は特に気づいていない様子だった。


「どう?何か読めた?」

「いや、今は何も読んでない」

「え、じゃあやってみてよ!」

「……分かった」


俺は軽く集中して、そっとドアを開けるイメージをする。


(……お昼ごはん何にしようかなぁ。今日の学食のカレーは美味しいかな?)


「……カレーがどうしたって?」

「え!?なんで分かったの!?」


ひかりがびっくりして俺の顔を覗き込んできた。


「やっぱり、俺の能力は"チョイ"じゃないかもしれない……」

(もしかしたら、もっと自由にコントロールできるようになるかも……)

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