次の日、俺は朝から落ち着かなかった。
(俺の能力って、本当は"チョイ"じゃないのかもしれない……)
白崎先生の言葉が頭から離れない。
いつもなら深く考えないようにして流すのに、今回はどうにも気になってしまう。
学校に着くと、ひかりがすでに待っていた。
「おはよう佐倉くん!昨日の実験の続きをやろう!」
「えっ!?いや、昨日のは実験にならなかっただろ!」
「そうだけど!でも、"読まれたことに気づかれないようにする"っていうの、試してみたいじゃん!」
ひかりは目を輝かせながら俺を見つめてくる。
「……分かったよ」
俺は軽くため息をつきながらも、昨日の続きを試すことにした。
「じゃあ、まずは目を合わせるぞ」
「うん!」
ひかりと目を合わせる。
(……佐倉くん、昨日なんであんなに慌ててたんだろ?もしかして、私のこと……え、そんなわけないか。うん、ないない。でもちょっと気になるな……)
「うわあああ!!!」
「だから何!?今の流れで叫ぶ要素ないでしょ!?」
「ちょっと黙れ!思考がうるさい!!」
俺は顔を覆った。昨日に続いて、ひかりの考えがダダ漏れすぎる。
「えー、何考えてたのか気になるなぁ~」
「知らん!」
「じゃあ次、"読まれたことに気づかれないようにする"のを試してみよう!」
「お前、もう少し恥じらいを持て!」
俺は半ば強引にひかりの提案に乗ることになった。
(……よし、今度こそ"読まれたことを悟られない"ようにしてみよう)
目を合わせ、相手の心を"静かに"読むイメージを持つ。
すると——
(……あれ?)
俺は驚いた。今までのように"相手の思考が勝手に流れ込む"のではなく、"自分で選んで"読める感覚があった。
まるで、ドアの前に立ってノックするような……そんな感覚だ。
「……できた?」
「……たぶん」
俺はひかりの目をじっと見つめたが、彼女は特に気づいていない様子だった。
「どう?何か読めた?」
「いや、今は何も読んでない」
「え、じゃあやってみてよ!」
「……分かった」
俺は軽く集中して、そっとドアを開けるイメージをする。
(……お昼ごはん何にしようかなぁ。今日の学食のカレーは美味しいかな?)
「……カレーがどうしたって?」
「え!?なんで分かったの!?」
ひかりがびっくりして俺の顔を覗き込んできた。
「やっぱり、俺の能力は"チョイ"じゃないかもしれない……」
(もしかしたら、もっと自由にコントロールできるようになるかも……)