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第7話 白崎先生の正体

次の日の朝、学校に着くと、ひかりが興奮した様子で駆け寄ってきた。


「佐倉くん! 白崎先生のこと、ちょっと調べてみたんだけど……」

「え、マジで?」

「うん! でも、すごく変なの。前の勤務校の記録がほとんどないのよ。それに、超能力者データベースにも登録されてないみたい」

「は?」


この世界では、超能力者は政府によって管理されている。能力者は0.1%しかいないから、基本的にデータベースに登録されるのが普通だ。


「つまり……白崎先生は、本当は能力者じゃないか、もしくは何か隠されてるってことか?」

「多分ね」


俺たちは顔を見合わせた。ますます怪しい。


「よし、もう一回白崎先生に接触してみるか」


──昼休み。


俺は再び職員室へ向かった。ひかりは廊下で待機。


「先生、質問いいですか?」

「おう、佐倉か。なんだ?」


白崎先生が俺を見た瞬間、また、ハッキリした思考が聞こえた。


(こいつ……昨日、私の思考を読んだな?)


ヤバい!!


俺はとっさに目を逸らしたが、もう遅い。白崎先生はニヤリと笑った。


「……佐倉、お前さ、"チョイ能力"なんかじゃないんじゃないか?」

「えっ?」


先生は俺をじっと見つめた。


「お前の能力、本当は"チョイ"どころじゃないんじゃないのか?」


心臓がドクンと跳ねる。


「まさか……先生も"読める"のか?」

「いや、俺は読めない。でも、"読まれた"ことには気づく」


読まれたことに気づく……? そんな能力があるのか?


「お前、もう少し自分の力をちゃんと試してみた方がいいぞ」


そう言うと、白崎先生は意味深に笑い、何事もなかったかのように書類に目を落とした。


俺はその場を立ち去りながら、背中に冷や汗をかいていた。


(俺の能力、本当は"チョイ"なんかじゃないのか……?)


──放課後。


「で、結局どうだったの?」


ひかりが俺の顔を覗き込む。俺はため息をつきながら、白崎先生とのやり取りを簡単に説明した。


「なるほど……やっぱり先生、怪しいね!」

「お前、テンション上がってない?」

「そりゃもう、ミステリーの香りがするからね!」


こいつは相変わらず楽しそうだ。


「それより、佐倉くん!」

「ん?」

「今週の土曜、空いてる?」

「……なんで?」


ひかりはスマホを見せながら、ニコッと笑った。


「このフェアトレードのカフェ、一緒に行かない?」

「フェアトレード?」

「うん。ちょっと前にオープンしたお店で、コーヒーとかチョコレートとか全部フェアトレード商品らしいの。前から気になってたんだけど、1人で行くのもなーって思ってて」

「俺、別にコーヒーとか詳しくないぞ?」

「大丈夫大丈夫! そういうの関係なく、普通におしゃれで美味しいんだって!」


ひかりはワクワクした様子で画面をスクロールする。


「それにさ、佐倉くん、甘いもの好きでしょ? そこのカフェ、フェアトレードのチョコレートを使ったスイーツが評判なんだって!」

「……マジで?」


少し興味が湧いてしまった。


「じゃあ、行ってみるか」

「やった!」


ひかりは満足そうに笑い、スマホを操作し始める。


白崎先生の謎、俺の能力の変化、そして急に決まったカフェ巡り。


なんだか、週末が妙に落ち着かないものになりそうだった。

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