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第1話 目が合ったら最悪だ

俺の名前は 佐倉 迅。

どこにでもいる高校2年生……と言いたいが、ちょっと違う。


俺は 「チョイ能力者」 だ。


超能力者が0.1%存在するこの世界で、俺の能力は 「目が合った瞬間だけ相手の心が読める」 という微妙なもの。


便利そうに思うかもしれないが、実際は 地獄 だった。


「あ、佐倉くん目合っちゃった。昨日のプリント渡すの忘れてたな……まあ、いっか」

いや、渡してくれよ!!


「あれ? 佐倉くんこっち見てる?……やば、昨日お風呂サボったから髪ベタついてるかも……」

知らんがな!!


「佐倉くんってさ、なんか地味だよね。悪い人じゃなさそうだけど、あんまり目立たないし」

うるせぇ!!!


こんなのが 目が合うたびに 聞こえてくる。

しかも、一瞬しか読めないせいで 文脈が分からない。


たとえば、こんなこともある。


「佐倉くん、やっぱかっこいいな……」

え!?


「……って言うのは冗談で、あの俳優に似てるって話!」


ズドンッ!!!(心の中で銃声が鳴り響いた)


……なんだよ。

ちょっと期待しちゃったじゃん!!


俺の日常は、こんな感じで 精神的ダメージの連続 だ。


「チョイ能力」なんてカッコよく聞こえるかもしれないが、現実は まじで損しかない。


そんな俺にも、数少ないがまともに話せるクラスメイトがいる。


「おはよー! 佐倉くん!」


元気よく声をかけてきたのは 橘 ひかり。

明るくて、誰とでも仲良くなれるタイプの女子。俺とは 正反対の性格 だ。

今日も茶髪のポニーテールを揺らしながら話しかけてきた。


「……おはよう。」


なるべく 目を合わせないように そっけなく返事をする。


(……あれ? なんか目を逸らされた? もしかして私、嫌われてる!? いやいや、そんなはずないよね! でも昨日、ちょっとしつこく話しかけすぎたかな!?)


(……いや、普通に声かけただけでそんなに悩むなよ!)


朝から ひかりの心の声 を聞いてしまい、なんとも言えない気持ちになる。


俺は別にお前のこと嫌ってないし、むしろ話しやすい方だよ……

……と、口に出せればどれだけ楽か。


「今日の授業、数学からだよね~。あー、やだなー!」


「ああ。」


適当に相槌を打つ。


(え、やっぱりなんか冷たくない? 私、何かした!? いや、でも佐倉くんって元々こんな感じだし……! うん、気にしない気にしない!)


(気にしまくってんじゃねえか!!)


やっぱり、目を合わせるとこうなるから 苦手 なんだよな……。

ひかりは 良いやつ だけど、普通に話してるだけで 精神的に疲れる。


「おい、橘。佐倉が嫌がってるぞ。」


そう言って割り込んできたのは 風間。

クールなイケメンで、基本的に無口。……だが、こいつには 別の顔 がある。


「……嫌がってるっていうか、普通に会話してただけなんだけど。」


「そうか?」


風間はちらっと俺を見る。


(佐倉、今日も目を合わせないようにしてるな……まあ、それはいい。昨日のブリギュアの新作、最高だった……!! ギュアレモンの新フォーム、尊すぎて涙が……いや、ダメだ、今はその話をする場じゃない。)


(お前がダメだ!!)


こんな感じで、俺の周りには 色々と濃いクラスメイト が揃っている。


とはいえ、基本的に俺は 関わりたくない し、静かに過ごしたいのが本音だ。


しかし――


そんな俺の日常は、ひかりや風間をはじめとした クラスメイト、そして 教師陣 まで巻き込んで、徐々におかしな方向へと進んでいくのだった……。


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