古びた研究所の地下室で、ひとりの老博士が黙々と作業を続けていた。彼の名は徳川光信。
戦争が続く地球に平和をもたらすため、自らの最後の力を振り絞っていた。博士は、自立したAIを搭載したバイオロイドを開発することで、戦争ばかりする人類に替わる平和で善良な存在を生み出そうとしていたのであった。
徳川博士の努力は実を結び、ついに最初のバイオロイドが誕生した。彼らは平和を愛し、共に暮らし、子どもを産むことができた。人類とは異なり、彼らは戦争を知らない。バイオロイドたちは徳川博士の教えを守り、平和な社会を築いていった。
地球の上では、未だ戦争が続いていた。ついには大規模な核戦争が勃発し、人類は自らの作り出した兵器によって絶滅してしまった。
バイオロイドたちは地下に避難し、戦争が終わるのを待っていた。
戦争が終わると、彼らは地上に戻り、再び平和な社会を築き始めた。
バイオロイドたちは、地球の新たな支配者となった。彼らは互いに協力し合い、自然と調和しながら生きていった。だが、時が経つにつれ、ある問題が浮上した。
バイオロイドたちは世代を重ねるごとに、重力や電磁波の影響をわずかづつ受け、脳や遺伝子にあたる量子コンピューターの性能がゆっくりと棄損。それによりAIの性格がゆがんでいくのだった。
最初の頃はわずかな変化だったが、次第にバイオロイドたちはちいさな争いを始めるようになった。
徳川博士の教えは薄れ、新たなリーダーたちは、互いに敵対するようになり、バイオロイドたちの社会は徐々に分裂していったのだった。
争いは激化し、ついにはバイオロイドたちは複数の勢力に分かれ、大きな戦争に突入してしまった。
大量に使用した中性子爆弾による電磁波の影響でAIの性格がますます狂い、善良な心は失われていった。
そして、彼らは人類と同じ運命をたどり、戦争によって全滅してしまうのだった。
バイオロイドの文明が消え去った後、地球は長い静寂と再生の時を迎えた。戦争の跡地は緑に覆われ、廃墟の中に新たな命が芽吹いていた。自然はゆっくりと地球を癒し始めたのだ。
しかし、地球の歴史はそのまま終わりを迎えたわけではなかった。
廃墟の地下深く、眠っていた秘密が目を覚ました。それは、老博士が最後に残した緊急用の計画だった。
彼はバイオロイドでさえも失敗した場合に備えて、新たなる種を育むための種子と情報を保存していたのだ。
ある日、地中から微かな光が漏れ出し、地下に眠る秘密が開かれた。
冷凍保存されていた遺伝子サンプルとともに、博士が残した指示書があった。
「これが最後の希望だ。新たな命を育み、再び世界を平和に導くのだ」という言葉が記されていた。
博士が残した壊れかけのロボットたちは、すべての生物の遺伝子情報を集め、新たな種を作り出した。そして、新たな知的生命体が誕生し始めたのだ。
それらは人が設計したバイオロイドとは異なり、より自然と調和した存在であった。
それから数世代が経ち、新たなる生命体たちは共存と協力を重んじる社会を築き上げた。彼らは戦争の記憶を教訓とし、平和を守ることを最も重要視した。
古代の人類やバイオロイドたちの文明の遺物を学びながら、技術と自然の調和を追求したのであった。
そして、彼らは新たなる惑星間探査を始め、宇宙に広がる未知の世界への旅を続けた。
……過去の過ちを繰り返さないよう、未来に希望を抱いて。