金曜日。多くの生徒にとって休日前の最高の曜日。
月曜日が憂鬱なら金曜日は爽快といっても過言ではない。
しかし柏は我孫子から後二日で決断しろと言われてから悩み続けていた。
全く気分が上がらず、三限目になった今も唸っていた。
それをずっと気にしていた館山が、ついに我慢できず話しかけた。
「柏っち柏っち。今日は随分と唸っているじゃあないか」
「おお館山。分かるか」
「分かるっていうか……」
館山はクラスみんな思っているよという言葉を飲み込み、話を進める。
実際、周りのクラスメイト達は「館山のやつ、やっと話しかけたよ……」「今日の柏くんはいつもの三倍は変人だね」「さっきの授業中も上の空だったし」と陰ながら柏のことを気にしていたのである。
「で、何が悩みなんだい柏っち?」
「実はな……」
柏は昨日あったことを要約して館山に話した。
「なるほど、なるほど。要は明日の部活までに決断しないといけないことがあると」
「そういうことだな」
「で、決められないから悩んでいると」
「あ、ああ……館山? なんか呆れてる?」
柏の指摘通り、館山はジト目になって呆れていた。
理由が分からず困惑する柏に対して、成田はため息交じりに答えた。
「はぁ、柏っち。へたっぴさ。相談の解放のさせ方がへた……」
「相談の解放…………?」
意味の分からないその言葉に困惑しながら、柏は館山を見た。
なんか地下労働所で班長やってそうな雰囲気を醸しがしながら館山はビシっと柏を指さした。
「一人で解決しないなら一人で悩まない! これ! 小学生でも知っている常識だよ?」
「いや、しかしだな……」
「いやもしかしもない! 柏っちは人を頼るのが下手だね!」
「なん……だと……!?」
なんとなく図星を言われた気がした柏は、思わず声を上げる。
館山は得意げに笑う。
「仕方ないからこの館山お姉ちゃんが何とかしてあげよう!」
「これは演劇部の――」
「んー? だから何?」
「いや、だって今館山には関係――」
「んー? 別にいいでしょ。なんなら我孫子先輩に許可とる?」
「……分かった。よろしく頼む」
こうなった館山が止まらないことを知っている柏は降参してお願いすることにした。
満足した館山はスマホを取り出してどこかに連絡する。
「? どこに連絡しているんだ?」
「ん? ちょっとねー。それより相談代にまた何か奢ってよ」
「やはりそれが狙いか。またクレープでいいか?」
「うーん? 粉ものが食べたい気分」
「粉もの……フードコートでも寄るか? たこ焼きがあっただろ」
「のった! 交渉成立だね!」
そういって握手をする二人。
周りのクラスメイト達が「またデートの話をしてるよ……」「何で賭博破●録の班長……?」「館山がお姉ちゃんっていいな……」と気にしていたことを二人は知る由もなかった。