「凛ちゃん、機嫌直った?」
「ええ、大丈夫よ玲奈。ありがとう」
「にしても、すごかったね、まるでカップルの距離感だった」
「そうね」
体育館で他のチームがバスケをしている中、流山たちは恋バナをしていた。
演劇部の流山と鎌ヶ谷、陸上部の白井はあまりバスケが得意ではなかった。
「ひょっとして柏先輩ってモテるの?」
「どうかしら」
「凛にさっきの人、それに同じ演劇部の船橋さん? も柏先輩のことが好きなんでしょ?」
「ええ、そうね」
「確かに顔はちょっと良かったけど、そんなにモテるんだー」
柏のことをあまり知らない白井からしたら謎だった。
鎌ヶ谷が補足するように言う。
「面白い先輩。気づくと輪の中心にいる」
「へぇー、そういう感じなんだ」
「それもあるけど――」
流山が何かを言おうとして、口を紡ぐ。
二人は流山のその様子を感じ取り、気にせずに話を続ける。
「ライバルが多いことだし、何か作戦を考えないとね!」
「確かに」
「作戦?」
「そ! 凛はさ。柏先輩とこれしたいとかないの?」
「そんなの、急に言われても」
「ある」
「え?」
急に浮かべて困惑する流山の横で、鎌ヶ谷が答える。
何を知っているの? という視線を流山が送ると鎌ヶ谷は言った。
「凛ちゃんは、柏先輩が他の人を可愛いと言っている時が一番睨んでいる」
「おおー!」
「ちょ、ちょっと玲奈?」
「ズバリ! 凛ちゃんは柏先輩に可愛いと言われたい!」
珍しく鎌ヶ谷がテンション高く言った。
「な、何を根拠に言っているの」
「いつも横で見ていたから間違いない」
「なるほどねー、凛は意外と乙女だなぁー」
「な、なんで確定事項みたいになっているの!」
流山が必死に否定するが、二人の中では既にそういうことになっていた。
そして、白井が聞き返す。
「じゃあ、言われたくないの?」
「え、いや、その、言われたいか言われたくないかだったらそりゃ――」
「そういうこと」
「決まりだね! じゃあ可愛いと言われるように作戦を考えないと!」
「ちょ、ちょっと二人とも!?」