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第12話 柏浩介はダメ出しをする

「で、流山と船橋が言い争って時間の半分ぐらいをなくした、と」


「「だって、こいつが」」


「シャラップ! 言い訳しない!」


 お互いに指さして何か言おうとした二人を成田が強引に黙らせる。

 劇を見た二年生たちは、どう言ったものか悩んでいた。

 少しの沈黙の後、成田が言った。


「酷いな。上手いか下手かの話ではない。時間があったのに有効活用できなかった集団としての問題だ」


「まぁ、そうだな。なんつーの? 主体性? 集団能力? が足りないのか」


 松戸が成田の話に乗っかりながら、問題の指摘をする。

 流山と船橋以外の一年生六人は、その通りだと思う。

 だが、問題の二人は納得いっていない様子だった。

 それを見た松戸は黙っていた柏に話を振った。


「柏はどうだった? 今の劇」


「一番良かったのは君津だな」


「え、ええ!? わ、私ですか?」


「ああ、四女の役良かったぞ。可愛かった」


「か、かわ、わわわ」


 君津はストレートに褒められたのが恥ずかしかったのか、近くにいた木更津の背に隠れる。

 松戸が聞きたかった答えではないのだが、流山と船橋の二人には効いたようで、


「可愛い……っ!」


「くっ……!」


 と苦しそうな表情に変わった。

 それを見た成田がにやりと笑った。


「おい浩介。せっかくだ。二人の評価もしてやれ」


「流山と船橋か。そうだな……」


 二人が期待した目で柏を見る。

 柏は少し考えた後に答えた。


「まぁ、酷かったな。船橋は主役やるならもっと周りと呼吸を合わせないと、流山も完全に演技が独立していた。周りを見ないとな」


 褒めることは一切なかった。

 それもそうだろう。今回の劇で一番酷かったのは二人の掛け合いのシーンだったのだから。


「ふはは、だそうだ二人とも、残念だった!」


「まったく、柏もえぐいんだから」


 満足そうに笑う成田と頭を抱える松戸。

 それは聞いた流山と船橋は、真っ白になっていた。

 他の一年生たちも、まさかそこまでストレートにものを言うと思っていなかった。


『柏先輩すげー』


 と若干引いていた。

 良く状況を理解していない柏は、その後一年生一人一人にダメ出しを言って行った。


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