「で、流山と船橋が言い争って時間の半分ぐらいをなくした、と」
「「だって、こいつが」」
「シャラップ! 言い訳しない!」
お互いに指さして何か言おうとした二人を成田が強引に黙らせる。
劇を見た二年生たちは、どう言ったものか悩んでいた。
少しの沈黙の後、成田が言った。
「酷いな。上手いか下手かの話ではない。時間があったのに有効活用できなかった集団としての問題だ」
「まぁ、そうだな。なんつーの? 主体性? 集団能力? が足りないのか」
松戸が成田の話に乗っかりながら、問題の指摘をする。
流山と船橋以外の一年生六人は、その通りだと思う。
だが、問題の二人は納得いっていない様子だった。
それを見た松戸は黙っていた柏に話を振った。
「柏はどうだった? 今の劇」
「一番良かったのは君津だな」
「え、ええ!? わ、私ですか?」
「ああ、四女の役良かったぞ。可愛かった」
「か、かわ、わわわ」
君津はストレートに褒められたのが恥ずかしかったのか、近くにいた木更津の背に隠れる。
松戸が聞きたかった答えではないのだが、流山と船橋の二人には効いたようで、
「可愛い……っ!」
「くっ……!」
と苦しそうな表情に変わった。
それを見た成田がにやりと笑った。
「おい浩介。せっかくだ。二人の評価もしてやれ」
「流山と船橋か。そうだな……」
二人が期待した目で柏を見る。
柏は少し考えた後に答えた。
「まぁ、酷かったな。船橋は主役やるならもっと周りと呼吸を合わせないと、流山も完全に演技が独立していた。周りを見ないとな」
褒めることは一切なかった。
それもそうだろう。今回の劇で一番酷かったのは二人の掛け合いのシーンだったのだから。
「ふはは、だそうだ二人とも、残念だった!」
「まったく、柏もえぐいんだから」
満足そうに笑う成田と頭を抱える松戸。
それは聞いた流山と船橋は、真っ白になっていた。
他の一年生たちも、まさかそこまでストレートにものを言うと思っていなかった。
『柏先輩すげー』
と若干引いていた。
良く状況を理解していない柏は、その後一年生一人一人にダメ出しを言って行った。