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一章 その1

★ 三年四組、出席番号1番、浅田那月 なつきという名だが男だ。オレより唯一出席番号が前の浅田は頭がよくて、県内トップの高校を受験予定だった。


 浅田の代わりにペンを走らせる。受かるだろうか。受かってどうするのだろうか。

そんなことは今はどうでもいい。


★ 三年四組、出席番号7番、小林和(なご)心(み) 学内で一番バレーボールがうまいと言われていたバレーボール部のキャプテン。何度も何度もアタック、レシーブを繰り返す。


★ 三年四組、出席番号19番、三嶋佳子 トライアスロンをしていた筋肉質な子だった。

走る、自転車に乗る、泳ぐ。きつい、こんなキツイことをしていたのか。


 僕がなんでこんなことをしているのか。


 だって……。


第一章 


 桜咲く、花は満開で、風が吹けば花吹雪、少し大きな制服を身にまとい、僕達は緊張の面持ちで集合写真を撮った。


 小学六年まで栃木県の田舎で暮らしていた僕は、親の都合で東京へと引っ越した。言葉がなまっている僕はイジメられるんじゃないかなんて、最初はドギマギしていたけれど、一年のクラスの皆は朗らかで優しかった。


 公立中学ではなくて、私立中学に入学することになった僕。もちろん試験は受けた。

 友達と一緒にバスケットボール部に入部した僕は、身長を伸ばしたくて、毎日牛乳を必ず一リットル飲んで、ヨーグルトを食べてしらすや、小魚を食べていたが、僕の希望とは裏腹に百六十八センチのまま殆どそこから上へと伸びない。小柄でも、小回りの効くプレイができればいい。そう思っていた。

 それに、バスケ部には水谷さんというかわいいマネージャーがいた。小柄で黒髪のボブ、小動物のようなつぶらな瞳の水谷さんは、バスケ部全員の憧れの的だった。


 しかし、二年生でクラス替えになったら、仲のいいヤツと全員離れてしまった。



 クラスで隣の席になったのは、八郷悠真はちごうゆうま、成績優秀、スポーツ万能の彼だが裏の顔を知らなかった僕は仲良くなろうと毎日、声をかけていた。

 ある日、悠真に家に遊びにいっていいかと尋ねられた。僕の家は、築六十八年、僕の祖父と祖母が結婚した時に建てた家らしくて、木製、瓦屋根、プロパンガス、そしてトイレが家の外の庭にあった。引っ越したキッカケは、祖父と祖母が亡くなったことで家を管理するものがいなくなったためだった。

 父は全国に支店を持つ企業で働いていたため、引っ越しに合わせて関西に配属されることになった。


 家が古いことが恥ずかしくて、友達を家に呼ばないようにしていたが、八郷はとてもいいヤツだと思っていたので、家がボロくてもトイレが外でも気にしないだろうと思っていた。


 僕の家に招待した翌日から、自分の知らないところで情報がまわっていた。トイレは外にあるが、一応水洗トイレでぼっとんではない。しかし、後々知ることになる。


 八郷が僕のことをバカにするメッセージをクラス中に送信していた。もちろん僕を除いてのグループラインでだ。


 この学校は私立なのもあって、基本、お金持ちの家の子が集まっている。八郷は僕の家が貧乏で惨めで臭い、ゴミ屋敷みたいな家だったと嘘をついた。


 家が古いというだけで、惨めでも貧乏でもゴミ屋敷でもない。しかし、クラスのヤツらから、八郷は信頼されていたため、皆が本当のことだと思ったそうだ。

『ハエがたくさん飛び回っていた』

『シロアリに喰われた痕があった』

『畳が腐っていた』

『便所がやばい』


 嘘だらけの情報が駆け巡り、僕はみんなから避けられるようになった。この話をクラスのみんなが信じたのは、もう一つの理由があった。


 僕の家の二件となりは、本当にゴミ屋敷だったのだ。


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