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第23話 学園ライフ④

ぽりぽりと掻いた手が止まり、シグルドの声が部屋にこぼれる。


「ふぅ、腹が減った。飯を食いに行こう」


幸いにも、午後に学校で会議があることはしっかり覚えていた。


食事を済ませたシグルドは学園の教員会議に出席した。


会議室では、僅かに頭を下げ、細めた目で最上席に学長ザレカ鎮座していた。よく知らない者から見れば、まるで居眠りしているかのように見えた。


そこには新入生のクラス担任たちが揃っていた。


最後にシグルドがやって来ると、学長の隣に座っていた美しい女性教師がその姿を見るや否や、そっとため息を漏らした。


かつてリンドラが知っていたシグルドは、今のような怠慢な教師ではなかった。


かつての彼は、8級武者として誇り高く振る舞い、ドラゴンを従えていた。まさに天賦の才を持つ寵児であった。


強者のみが触れることを許される上級魔獣。

その絶対王者たるドラゴンを従えるなど、凡庸な者の手が届く領域ではない。


しかし、あの事件以来、シグルドはまるで別人のように変わってしまった。


今ではすっかり覇気を失い、何事にも興味を示さない。身だしなみも気にせず、すさんだ生活を送っていた。


「これで全員揃ったようだな。では、会議を始めるとしよう」


シグルドが席に着くと、学長のザレカが低い声で言った。その体は微動だにせず、まるでその声が体の芯から発せられたかのようだった。


教師たちは特に驚くこともなく、淡々と姿勢を正し、静かに腰を据え直した。


「すでに2千匹以上の1級魔獣を確保しており、今回のテストには十分な数です」


一人の教師が口を開いた。


毎年、新入生の入学後には「魔獣手懐けテスト」が開催される。


用意される魔獣はすべて下級のもので、手懐けるという過程そのものは、デュオのように魔獣が自ら主を選ぶのではなく、むしろ馬の調教に近い。


新入生が魔獣と戦い、それを従わせる様子を通じて、教師たちは各生徒の長所と短所を見極める。アルティメア魔法学園では、これが毎年欠かせぬ伝統行事となっていた。


この学園に入学できるのは天才たちばかりであり、一対一で1級魔獣を相手にすることは難しくない。だが、もし多数の魔獣に囲まれたとしたらどうだろうか?


魔導士として生きる以上、どんな緊急事態にも対応できる力が求められる。


帝国では、魔獣の群れが発生する脅威が常に存在しており、複数の魔獣を同時に相手取る能力は、魔導士として必須の技術だった。


「開催時期は例年通り、今学期6日目でいいでしょう」


透き通る心地のよいリンドラの声が響いた。


30代だが、彼女の見た目は20代前半のように若々しい。


黄金の長髪、しなやかに伸びた美しいまつ毛、整った端正な顔立ち――かつて、彼女に心を奪われた者は数知れなかった。


「ところで、武道クラスは参加しない方がいいんじゃないか? ただの脳筋たちだ。魔獣を1匹倒せるのかすら怪しいものだ」


突然、一人の男性教師が軽蔑した口調で提案すると、視線が一斉にシグルドへと集まった。


とりわけリンドラは、シグルドが武道クラスの指導を任されたことで、何らかの変化があるのではと期待していた。だが――彼の姿は相変わらずだった。


「俺は反対だ」


それまで後方の席にだらけた姿勢で座り、一度も顔を上げていなかったシグルドが、ついに口を開いた。


たった一言だが、その声には明確な意思が込められていた。


「武道クラスの生徒も学園の一部だ。あの子たちが参加しない理由はない」


リンドラもすぐに賛同した。


「その通りです。生徒は皆平等に扱うべきです」


さらに二人の教師が同意の意を示した。


武道クラスを見下していた男教師は、横目でシグルドを一瞥する。その瞳には嫉妬の炎が揺らめいていた―――ここまで転落した男に、なおも味方がいるとは、理屈では理解し難い。


「先生方がそうおっしゃるなら」


男は小さく肩をすくめ、嘲るような笑みを浮かべながらつぶやいた。


「武道クラスの生徒が魔獣の前でのたうち回って、泣き言を喚き散らして逃げるのが目に見えています。最後まで立っていられる者が何人いることか……」


その言葉には、あからさまな嘲りが込められていた。


あたかも、彼らが出場すれば惨めな姿を晒すのが目に見えているかのように。



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