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第11話 入試③


入試の第二項目は精霊との親和性についてだった。

生徒が自然界の精霊に親しまれるか測るためのものだ。

予想通り、ルーカスの結果はまたしてもゼロだった。


彼が、透明で密閉された精霊の小屋に足を踏み入れると、中に舞っていたさまざまな精霊たちは極度に嫌悪感を示した。

もし部屋が密閉されていなければ、ルーカスが入った瞬間に精霊が全員逃げ出していたところだろう。

特に火の精霊の嫌悪は露骨で、手のひらにおさまるほどに小さな姿をした精霊は、なんとルーカスに向かって唾を吐くという行動に出た。

微笑みを浮かべながら精霊の部屋を出て行ったルーカスだが、出る直前にさりげなく指を弾き、姿なき刃のような風を放って火精霊の小さな腕の一本をへし折った。

平穏な生活を望むルーカスだが、実は根に持つタイプでもあった。

両親が苦労しているのも、ライアン家が衰退したのも、すべてかつて火神の怒りによるものだった。そのため、火の精霊の露骨な敵意に対して、小さな仕返しを加えることに何の躊躇もなかった。

そして、魔力の測定で大きな話題を呼んだジュリアが精霊の小屋に入る番になると、多くの生徒の注目を浴びた。

「ジュリア、入ったらお兄ちゃんが教えた呼吸法を使うんだよ」

ルーカスは小声でそう言い、胸を張って進む妹の姿を見送った。

雷神の七精霊の恩恵を受けた秀才として、雷の精霊から親しまれるのは当然だった。ジュリアが小屋に足を踏み入れると、雷精霊が嬉しそうに彼女の差し出した手のひらに飛び込んできた。この光景に、多くの人々が羨望の声を上げた。

「見ろよ!精霊が自ら近づいてくるなんて!雷の精霊の親和度が最大に達している証拠だ!」


「私なんて、一番親和性が高かった水の精霊が頭上を飛び回っただけなのに…」


「俺もそうだ。風神の六精霊の恩恵を受けたのに、風精霊は一度も手に触れてくれなかった。あの子の才能は尋常じゃない!」


周りの評価を聞きながら、ルーカスは意味ありげな微笑みを浮かべた。


くっくっく、うちのジュリアの親和度はこんなものじゃない。これに驚いてるなら、この先もっと面白いことになるぞ。


ジュリアを兄であるルーカスの守護天使として育てるため、あらゆる手を尽くしてきた。

十種類を超える補助武技を徹底的に研究し、武の真髄を極めたルーカスは、その叡智をもって新たな呼吸法<魔導錬気功>を完成させた。

ジュリアに3年間、<魔導錬気功>の修行をさせてレベル2まで習得させた。武道の壁があるものの、それでもジュリアの修行成果は十分だった。この術を用いることで全精霊の親和が40%向上する。

ジュリアが「魔導気脈術」のリズムで呼吸を始めると、さらに多くの元素精霊たちが彼女の周囲に集まり始めた。特に親近感の強い雷精霊は彼女の髪の中に潜り込み、かくれんぼをして遊び始めた。その様子にジュリアは声を上げて笑った。

全系統の精霊に囲まれ、透明な精霊小屋の中で輝くジュリア。その光景はあまりに幻想的で、会場の誰もが言葉を失い、やがて感嘆のざわめきが広がった。


「全ての精霊からこんなに親しまれるなんて、魔法の天才という言葉では説明がつかない!化け物だ!」


「もう感覚がおかしくなってきた。今回の入試一位は間違いなくあの子だな」


「潜在魔力がほぼ満点で、精霊の親和度も途方もなく高いなんて、羨ましいにもほどがあるわ!」


「ひょっとして彼女、王族の血を引いているんじゃないか?そうでもなければ、このあり得ない魔法の才能は説明できない」


「こんな天才と同じ学年になれるのは名誉だが、同時に絶望でもあるな...」


ジュリアを称賛し、羨む声が四方から響く中、ルーカスはそれを誇らしげに受け止めるように、静かに微笑んでいた。


妹がこれだけ目立てば、俺の学院生活も邪魔されることが少なくなるだろう。

武道クラスのルーカスをいじめたいと思っても、魔導の天才ジュリアの怒りを買うことを恐れるからな。

ジュリアの華々しい活躍は、ルーカスの平穏な生活の実現にまた一歩近づけてくれるものだった。

お兄ちゃん的には、ジュリアが「守護天使」でいると大いに助かる。

あと、その期間は無期限でよろしく!

精霊部屋から出てきたジュリアは、彼女に注がれる視線に戸惑い、すぐさまルーカスの背後に隠れ、大きな瞳を見開きながら小声で言った。


「お兄ちゃん、みんなどうして私を見てるの?」


ルーカスはそっと彼女の頭を撫でながら、二人だけに聞こえるような声で答えた。


「慣れておくといい。ジュリアは魔法の天才だからね」


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