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第8話 アルティメア魔法学園


アルティメア魔法学園の入学試験に参加するため、メイルは二日前にエース町を出発し、四人の家族の護衛と一人の付き添いのメイドと共に旅をしていた。しかし、二時間前に彼女たちは盗賊団に遭遇した。


四人の護衛は全身武装し、戦闘力では普通の盗賊よりも強かったが、盗賊団の頭領の魔法攻撃を受けて、まるで無防備な羊のように全員が命を落とした。


付き添いのメイドもメイルを守ろうとしたが、戦いの中で命を奪われた。


その後、盗賊団はメイルをさらい、メイルが早々にランスロット家の一員であることを明かしても、盗賊の頭領は「まさに貴族の子供たちを狙ったんだ」と言って、メイルを嘲笑った。


「魔法を使える盗賊の頭領、めったに見ませんな!


 貴族すら標的とするとは…尋常ならざる盗賊団でございますな… 


 この者たちの背後には、策を弄する何者かの姿が垣間見えます」


メイルの話を聞いて、盗賊団との戦闘を振り返ると、老執事はおかしな点に気づいた。


深夜、盗賊団との戦いで張ったテントがすべて壊れてしまったため、ジュリアとメイルは仕方なく馬車の中で一緒に寝ることになった。


焚き火のそばで、老執事は香ばしい焼き芋をルーカスに手渡し、にやりと笑いながら言った。

「ルーカス坊ちゃま、先日偶然お助けになられたあのお嬢様…実はかつてランスロット家との間で、坊ちゃまのご婚約者として話のあったお方でございます」


過去を思い出したルーカスは驚くこともなく、白い歯を見せて大きな一口を芋にかじりつけ、舌を鳴らして言った。「フォーデン爺ちゃん、ランスロット家はもう結婚の辞退に来たんだ、全部過去の話さ」


「それに、俺はまだ子供だろう? 大人がこんな話をするなんて…」


老執事は大笑いしながら言った。

「どうやら、坊ちゃまはメイルにそんな親密な繋がりがあったことを知らせたくないようですなぁ」


ルーカスは曖昧に頷き、口元に微かな笑みを浮かべて言った。

「フォーデン爺ちゃん、彼女は彼女、俺は俺だ。関係ないさ。俺みたいな子供は、勉強が一番だろう、そうじゃないか?」


「ごもっともでございます、坊ちゃまのお考えの通りにございましょう」


「さて、この件につきましては、メイル様にはお話しせずともよろしいかと存じます。やがてアルティメア魔法学園の一年生となられますれば、お二人とも何度も顔を合わせることになりましょうゆえ、気まずさを避けるのが賢明かと存じます」


翌朝、老執事が馬車を運転し、四人の一行は帝国北境の首都——ダクトに到着した。


ルーカスが住んでいる小さな町とは違い、ダクト城はカルミナ王都に次ぐ巨大な要塞都市で、その規模は圧倒的だった。これにより、小さな町で育った三人の子供たちは目を見張った。


この程度の繁栄度は、前世の札幌市に匹敵するだろう。ただし、建築様式がまったく異なり、人口は少し少なめだった。


城に入った後、ルーカスは観光気分で歩きながら、心の中で町をまとめた。


……


アルティメア魔法学園はカルミナ帝国の三大魔法学院の一つで、ダクト城の南に位置し、広大な敷地を誇っている。学院の構造や地形に不慣れな者は、出口を見つけるのに一日かかってしまうこともあるだろう。


学院は全寮制で、六年制の教育を提供しており、地、水、火、風、特殊の5分院が設置されている。


学院の1年生の間は、院には振り分けられず、1年間の魔法学習を経て、修了試験に参加することになる。大会の成績と魔法との相性に基づいて、各学部に振り分けられ、クラス分けが行われる。


もし6年の学院生活を順調に卒業できれば、高級魔法学徒資格証を得ることができる。もちろん、特別な才能を持つ学生であれば、卒業前に初級や中級魔導士の試験に合格し、魔導士として卒業式に参加することも可能だ。


その時、日が沈みかけていた。夕日の余光がアルティメア魔法学園の正門前にある創設者の像に降り注ぎ、像に金色の皮膚をまとわせたように見え、神聖で輝かしく、思わず崇拝の気持ちが湧き上がるような印象を与えた。


老執事の手綱で馬車は学院の大門前に停まった。入学試験の招待状がない者は、学院に入ることを許されていない。そのため、ここが別れの場所となった。


「フォーデン爺ちゃん、安心して。ジュリアのことはちゃんと面倒見るから」


ルーカスは目に涙を浮かべた老執事に向かって手を振り、整った白い歯を見せながら言った。


ルーカスよりも30センチほど小さい、身長110センチのジュリアも真似をして小さな腕を振りながら、笑って言った。

「フォーデンお爺ちゃん、安心して。私がお兄ちゃんを守るから」


ルーカスは優しくジュリアの小さな頭を撫でながら言った。「うちのジュリアは天才だから、学院では兄が君に守られることになるね!」

メイルは最初、少し恥ずかしそうにルーカス兄妹のそばに立ち、何を言えばよいか分からなかった。昨晩の血腥い誘拐事件がまだ心に残っており、ルーカスが妹の保護が必要だと認めた瞬間、思わず口角が上がり、軽く笑い声を漏らした。

本当に特別な別れの言葉だった。

ジュリアのような面白い兄がいることは、素晴らしいことだな!


老執事は振り返り、目の端に浮かんだ涙を拭い、夕陽に照らされたアルティメア魔法学園の門を通って行く三人の姿を見送った。その姿が完全に消えるまで見守った後、ようやく車を動かした。


盗賊団との遭遇については、すぐに当主であるホルトに報告しなければならない。

そして、ランスロット家にも、メイルが盗賊団にさらわれ、無事に救出されたことを知らせる必要がある。


ランスロットとライアン両家の関係は長年冷え切っていたが、それでも知らせなければならない。


そして、この知らせが、長く凍てついた二つの家の関係を溶かす鍵となるかもしれない。


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