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第4話 秘密の修行場②


「そのくらいにしなさい!」


少女の鋭い声が庭全体に響いた。


ジェレミーの髪は逆立ち、全身が真っ黒に焦げ付き、衣服は破れ、無残にも地面に崩れ落ちた。


ジュリアの手には桃色の魔杖が握られ、その先端にはなお雷の残光が漂っていた――


「ジェレミー、次は全力の雷撃を打つから、そのつもりで」


その冷たい声は、ジェレミーを締めつけ、自由を取り戻したルーカスは、ほっとした様子も見せずに、まるで奇襲が成功した後の悪党のように口元を歪ませて笑った。


怯えを浮かべるジェレミーに向かって拳を振り上げ、わざと脅すように言葉を続ける。


「ほーら、言っただろ。次は本気の雷撃が飛んでくるかもしれない。火遊びはほどほどにな」


妹を盾に取ったような態度と偉そうな物言いは、まるでこっちが悪党だと喧伝するようなものだった。屈辱を感じたジェレミーの表情は青ざめていた。


しばらくして、ルーカスは周囲に人がいないことを確認し、ジュリアの頭を優しく撫でた。


ルーカスの体から「パキパキ」と骨や関節が鳴る音が響き渡る。ツタの呪文で受けたダメージがみるみる回復していくのを感じながら、ルーカスは軽く肩を回して体をほぐした。


「おっ、無明鍛体法がLv.4に上がって、みるみる回復していくぞ…Lv.3の倍で傷が治っていく」

その効果を確認しながら、ルーカスは小さく息をつく。


「お兄ちゃん、本当はすっごく強いのに」

そばにいたジュリアが小首をかしげるようにしながらつぶやく。その澄んだ青い瞳には、ほんの少しの疑問が宿っていた。


「一撃で吹っ飛ばせるのに」


「ジュリア、それは僕たちだけの秘密だ」

ルーカスは微笑みながら優しくジュリアの頭を撫でた。


「うん、分かったわ!」

ジュリアは愛らしく頷き、嬉しそうに手を振りながらその場を去っていった。その小さな背中が見えなくなるまで見送った後、ルーカスは屋敷へと戻った。


厳重にかかった鍵を開け、地下室へと続く重厚な扉を押し開くと、暗い通路の先に螺旋階段が続いており、ルーカスはゆっくりと降りていった。


そこには、密かに修行を6年間にわたり続けてきた修行場が広がっていた。


前世で体育館くらいの広さを誇るその空間は、いくつかのエリアに分かれ、「鬼面松」の精油を燃料とした灯火で照らされ、昼間のように明るかった。


読書エリアには、10を超える本棚が整然と並び、魔法や武道、歴史、戦術に関する書物が分野ごとに分類されていた。古びた木製の机と椅子も配置されており、集中して学ぶには十分な環境が整っていた。


倉庫エリアには、17、18個もの大きな箱が積み重ねられていた。そのいくつかは半開きになっており、中には奇妙な形状をした薬草や鉱石が詰め込まれているのが見えた。


最も広い稽古場は、空間の半分以上を占めている。その一角には武器棚が並び、剣や槍、斧、鎖鎌など多種多様な冷兵器が揃えられていた。また、近くには500キロ近い重量のサンドバッグがいくつも吊り下げられており、いくつかは使い込まれて破損し、中身が露出しているものもあった。


目を見張るべきは、最大のサンドバッグだった。それは隕鉄の砂を詰め込んで作られたもので、その重量は驚異の1トンにも達していた。


足を踏み入れたルーカスは、拳を固く握りしめながら穏やかな表情を浮かべた――この場所は、彼が限界を超え続けてきた証だった。


最後はどこか異様な雰囲気を漂わせる、かろうじて浴場と呼べる場所だった。巨大な鉄製の桶が中央に据えられ、下には12時間燃焼可能な「鬼面松」を燃料とした薪が積まれている。


薪の炎は今も勢いよく燃え上がり、桶の中の謎めいた液体を沸点まで熱し続けていた。部屋中には濃厚な薬草の香りが満ちており、空間全体が独特の静けさと熱気に包まれていた。


桶のそばまで歩み寄ると、ルーカスはそそくさと衣服を脱ぎ捨て跳躍した。2メートルほどの高さから飛び込んだにもかかわらず、水しぶき一つ立てることなく、沸騰する薬液に全身を沈める。


熱湯に浸かりながらも、ルーカスの表情は温泉を楽しむように穏やかだった。さらには、前世の有名なアニメのオープニングテーマを口ずさむ余裕を見せていた。


「毎日この薬浴を欠かさずに3年……これこそが、武道で肉体を鍛え上げる最も効率的な方法だ」


さらに、ルーカスは家族の書庫で手にした「無明鍛体法」を習得し、その鍛錬を続けた結果、彼の肉体は常識を超える強さを備えていた。Lv5以下の攻撃型魔法を受けても一切の傷を負わない。加えて、魔法学園で優秀とされる学生でも、Lv5の魔法を完全に扱える者は稀少である。


2時間が経過すると、ルーカスは湯気の立ち上る身体を手早く拭き、粗布でできた練習用の衣服に着替えた。


裸足のまま、広大な練習エリアへと向かい、武器棚や訓練用のサンドバッグが並ぶ稽古場の中央には、並外れた強度を誇る訓練用の人形が鎮座していた。


人形の前に立ったルーカスは、静かに目を閉じて全身の気を練り上げ始めた。次の瞬間、彼は目にも留まらぬ速さで動き出し、残像を残すほどの速度で腰に差した武士刀が抜刀された。そして、一閃が空間を裂いたかと思うと、刀は音もなく鞘に収まり、全動作はわずか0.2秒の間に完了していた。


強烈な魔法攻撃にも耐えうるほど頑丈に作られた人形が真っ二つに斬られた。鋭さと威力は圧巻で、切断面には歪み一つない。


「一刀両断か……攻撃力がまた一段と上がったな!」


『天刃一閃』のLvが上がったおかげだな。修行には境地を突破しないといけないネックがつきものだが、祝福によってルーカスの修行はまるで水を飲むかのように簡単だった。


• 閃光槍・雲穿くもぬき Lv3

• 鎧崩し・甲割こうわり Lv4

• 烈覇拳・天破てんは Lv5

• 蒼天掌・鯨鳴げいめい Lv5


武に励む全ての者が境地という壁に阻まれ、100年かけても技をここまで磨き上げるのは叶わなかった。


稽古場には、練られた気が渦巻いていた。汗だくになったルーカスは、壁に掛けられた時計を見て修行を切り上げる。


「今夜は父さんが久々に家に帰る。家族の食事に顔を出さなきゃならないな」

そう呟き、ルーカスは服を整え修行場を後にした。


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