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⒛筆談取材「閉口令の現状」の草稿

※世界で最初に閉口令を発令した、某国の某氏による記述※

※国際通信社から取材を受けるに際して、某氏が作成する原稿の一部になる文章※


 国際社会からは、この国の閉口令は箝口令かんこうれいと同様な言論統制だと誤解を招いているが、筆談(電子筆談も含む)において以前からの言論の自由は保証されている。ただし、直情的な表現が規制されているのは、常態化すべきではない。

 閉口令は息が詰まる。箝口令は規制の範囲であれば、感情表現が許されるが、現状の閉口令は感嘆詞ですら規制対象だと一般では見なされているのだ。明らかな発声を伴う感嘆詞は、8歳以下には特例処置で許容されている。しかし、現状で規制の対象外として、政府が正式発表したのは【嘆息】のみ。溜め息や失笑の類である。

 世間では、過度の嘆息依存が増えている。中には呼吸困難気味になるほど嘆息して、循環器系に異常をきたす者も居るとか居ないとか。

 かくいう私も、最近は溜め息が絶えない。いや、昨今は溜め息も辛くなる息苦しさを感じる。

 単に作業をサボりすぎて、追い込まれているだけかもしれないが――。しかし、そもそも、なぜこんな取材を受けることにしたのだ。

 だって何もかも駄目なんだ。溜め息が止まらない。苦しいのにめられない。

 一つだけ確かなのは、溜め息の熟練度が完璧に近づいたことくらいだろう。溜め息の鍛錬に余念がない状況は、何を頑張ってもうまくいかないときの「せめてもの達成感材料」とでも言えようか。

 一刻も早く、笑い声や野次をためらいなく発したいものだ。鼻で笑うくらい、対象から外れてくれないかと、待ち遠しい今日この頃。

 その笑い声が自嘲的であってもいい。その野次がブーメランになってもいい。

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