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⒗口腔内心情日記

[三月一九日]

送別会(いつもの飲み会)から帰宅(早退)

そのまま暗い部屋でほうけていると


空気が薄くなった気がする


味の濃いものをり過ぎたか

のどかわいてからからだ

この一人部屋も 当然がらがら


僕一人だから だけど この落差はきつい


大勢おおぜいでの飲みいは

(楽しいかどうか別としても)

高密度こうみつどが過ぎる


よだれも出なくなった口が

今のさびしさをしている


暗く立ち込める夜になった


僕の溜め息は暗闇に 味気あじけない空気を込めた

それはもはや いずれ他人になっていく彼らに届くまい


溜め息が本当の意味でにおって不味まずいのなら

する前に反射で止めるけど

昨日までは 呼吸をするように溜め息をしてきた


無味無臭だったからだろう

周りの人たちにとっても

孤独を忘れた僕にとっても


そんな昔を思い出し 普段通りに息をしたら

なんとなく 味がした


僕の溜め息を 僕は吸い込んだらしい


溜め息の味がわかるのが みょうに嬉しいし

とても懐かしいような


寂しい空気と孤独感からつくられた風味

それを感じさせるのは


若い頃に持っていた感受性なのか?


当然 それよりも香味が強いのは

孤独にめを合わせた味

あの賞味期限が一瞬の味だけど


次の環境で それが判るまで

この感受性を保てるかどうか


溜め息が出るほど それが難しいことだと解かっているのに

繰り返し あの風味を再現しようとしも無駄だったのに


その思考がよみがえる

年度末が近いからか


舌をにぶらせる日常の味が 新年度から

にじり寄ってきそうだ


飽きの来ない風味が癖になるのを防ぐために

そろそろ この肥えた舌を減量しよう


わずかな風味の違いが判る人間を目指そう


いつかまた みんながまともに喋る時が来るか解からないが

とりあえず 備えておいて損はないだろう

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