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⒊災害教訓詩「考古族(被発掘願望有)」

もう一度、埋もれてみないか――

永遠の闇に。


いつかそこから、誰かが掘り返してくれるだろう――

きみのその心を探しに来た考古学者が、見ず知らずのきみを――

永遠の闇という、ヴェスヴィオスの灰の中から。


この世界が、ポンペイの懐古かいこの情けに流されて惑わされて、きみをそんな姿にした。


そうだ。


この世間もあの国境も、小さな政府も国際機関も、きみたちをそうした姿に変えた。


ポンペイの囲いを見てみろ。


外から見たことも無かったことすら気付かなかったから、思わず自嘲じちょうするだろう――

自らの愚かさ、にぶさ、莫迦ばからしさに。


それだけ高くそびえるヴェスヴィオスの真意を、ポンペイの囲いはくもらせた。

しかし、ヴェスヴィオスは否応いやおう無しに、きみたちのポンペイを埋めるだろう――

きみたちが真意を自ら曇らせている限り。


わたしのポンペイは滅びたのだ。

そしてヴェスヴィオスも。

それは自らのき出した灰で埋もれてしまったのだ――

きみたちの先祖がそうだったように。


わたしはポンペイを出なかった。

きみはポンペイを出てもいいのではないか。


良ければわたしを、滅亡したポンペイから掘り返してくれないか。

きっと分かるはずだ――

なぜ、きみたちがそんな姿をし、わたしたちと何も変わらないのか。


今、わたしは闇の中で崩れ落ちている。

わたしが崩れ落ちたとき、きみは世界に立っている。


昔、わたしも世界に立っていた。

いずれ、きみも闇の中で崩れ落ちるだろう。

しかし、いつかきみは、ポンペイの囲いの外に立てるのだ。

そして、ヴェスヴィオスへと歩むのだ――

それが自ら埋もれてしまう前に。


ヴェスヴィオスのいただきに立ち、きみはその真意を知るだろう――

わたしのポンペイは、きみのポンペイだったということを。


そして、きみが立つヴェスヴィオスは、何度もよみがえってきたということを。


わたしはきみの世界に掘り出され、このことを伝えるのだ――

世界はここにしかないのだ。


きみが仰ぎ見る天の先は、どこかの地中に通じているのだ。


きみが崩れ落ちたら、代わりに誰かが世界に立ち、きみを掘り返すのだ。

きみが立ててのこした、一つのしるべしたから。



           歴史防災推進派より、歴史認識無関心者 

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