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閉口世界の筆談論説
閉口世界の筆談論説
假名正稱
文芸・その他ノンジャンル
2025年02月19日
公開日
1.4万字
連載中
誰もが口を閉ざして、筆談している並行世界。口を閉ざさざるを得ない世界であるから、本文中に「口頭会話」は含まれていない。また、論説には仮説もあれば、新説もある。自論、異論、空論も無造作に……。たまに、閉口の実情が垣間見えたり……。

⒈脆弱理論的理想論

わたしは、誰かに声を聞かせるたびに、それがに感じるようになっていました。

考えたわりには、結果的に出た答えというものが、なんとなくずれている毎日です。


その考えは言葉です。


純粋な思いではなくなっているのが、言葉です。


人と人のあいだり取りする、交渉材料こうしょうざいりょうとして発案はつあんされたものです。

その交渉は利害という、あくまで物欲ぶつよくが支配する状況です。


声はことば、その原形げんけいは単純な音です。

思いを口唇こうしん即興演奏そっきょうえんそうした、強弱きょうじゃく旋律せんりつり返す音楽。

その演奏はきらいという、即時的そくじてき気分きぶん左右さゆうされる状態です。


わたしの思いは、利害もなく、好き嫌いも関係ありません。


しかし、どうしても思いについて考えて、それが言葉になります。

ほかすべがないので、声にしてしまうのです。

わたしは思いを伝えたいだけなのに、なぜなのでしょう。


思いはことばで、伝えきられるでしょうか。


わたしの思いをそのまま声にしたい。

声にする前に考えると、その結果は誤解ごかいしか伝わらなくなるような気がしてなりません。


伝わって欲しかったら、考えることが第一条件だいいちじょうけんなのでしょうか。


たしかに、社会は見えない条件がつきまとってくる環境です。


社会では、あなたの思いのままにできますか。


いえ、ゆるしを受けなければ。

社会そのものからの許し。


許されるには、言葉が必要です。


伝えるには、ことばが必要です。


あなたは、あなたの思いのままに少しでも近づけるように考えますね。

なぜなら学習してきたからでしょう、交渉相手が多いぶんだけ、利益りえきがでることを。

そして訓練もおこたらずにできたからでしょう、聞き入れやすいきょくかなでさえすれば、なんなくことは進むから。


それで事がりますか。


いえ、なぜか本当に欲しかったことは、満足できていないのではないですか。

おそらく、純粋な思いがあなたの心にとどまっているのでしょう、いつか伝えなければ、と。


わたしは、誰かに声を聞かせようと思いません。

少しでも、純粋な思いがある今だけでも。

少しずつでしか、思いは表れないとかり始めた今だからこそ。


目には見えなくても差し迫ってきている条件に、自身を当てはめようと苦しまなくなればどうなるでしょう。

わたしも多少たしょうは、個人のけずるような社会性を振り払い、無条件に他人ひとのことばを聞くようにしてみたい。

すると意外に、誰も決まって許すとかどうとか言わなくなるのかもしれません。

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