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027 酒場での出会い

 アタシたちは酒場で情報収集する。


 この姿を見ると男たちが勝手に声をかけてくるから、ウィルテの狙いは当たりだったと言えるだろう。


「へー。そうなんにゃ。魔物の違法取引ねぇー」


「ああ。今回は、その証拠を掴みてぇんだ。⋯⋯って、なんでさっきからそっちの姐さんは拳握りしめてんだ?」


「セクハラ発言したら殴るためだオラァ!」


「ハァ!?」


「レディー。落ち着くにゃ。確かに変態っぽい顔してるけれど、変態行為はしてないにゃ」


「変態っぽい顔? 失礼じゃね!?」


「そんなことはどうでもいいにゃ」


「よくねぇよ!」


「ま、それはともかく、依頼料はおおよそこんなもんで。それに指名料と、“ダブルパイパイ”にお話して貰えた返礼、拝観料も加えて⋯⋯」


「お話して貰えた返礼!? それに拝観料ってなんだよ!?」


「ざっとしめて、こんなもんにゃ」


 ウィルテが紙ナプキンに金額を書いて見せる。


「た、高い! ふざけんな! 0が1個多いだろうが!」


「これでもサービスしてるにゃ。さっさとギルドに依頼にし行くにゃ。そうでないと“狂犬”の猫パンチ⋯もとい、犬パンチが炸裂するにゃ」


「なんて無茶苦茶な!」


んぞ! ゴラァ!!」


 アタシはテーブルを拳で叩く!


「ヒィイイイッ!」


 男は泣きながら酒場を出て行った。


「⋯⋯で、冗談はともかくとして」


 アタシは拳を下ろす。


 ユーデスがビクッとしたけれども、別に今は・・アンタを殴るつもりないから。


「冗談には見えなかったにゃ」


「⋯⋯本気なら完全にイカれてるでしょ。

 でも、お陰で、男って、こっちが怒鳴ると意外と怒鳴り返してこないんだって知れたわ」


「怒鳴るのは気が小さいからにゃ。本当にヤヴァイ奴、死線を潜った奴は目を見れば判るにゃ」


 ウィルテはアタシの目を指差す。


「そもそも相手は魔法を使うかも知んないのに、体の大きさでケンカふっかけるかどうか判断してるのは、サイコロステーキ並みの知性しかないからにゃ」


 それは激しく同意。


 だって、怒鳴り返して来たヤツの殆どが、アタシが剣を抜く真似するだけで「今日は勘弁してやる」なんて言うしね。


「⋯⋯で、さっきの依頼人を脅してよかったの?」


「逃げちゃうんじゃにゃいかってこと?」


「うん。普通、あんなに脅されたら依頼しないでしょ」


「間違いなくするにゃ」


「なんでそんなこと言えるのさ?」


「だって、アレは町長の使いにゃ」


「そうなの?」


「表沙汰にできないような、危ないヘドロ臭がプンプンしてたにゃ。あーいうのは金払いがいいし、腕が立って、口が固いレンジャーを捜してるにゃ。酒場に来たのはそういう人間を捜してるからにゃ」


「よくそんなことまで分かるね」


「あー。町長の息子はとんでもないドラ息子にゃ。どうせまたその後始末にゃ」


「え?」


「前に二股かけた女の仲裁をしたことあるにゃ。でも依頼が終わった後に値切ろうとしてきたから⋯⋯その仕返しも兼ねてふっかけてやったにゃ」


「報酬値切るなんてできるもんなの?」


「普通はありえにゃいし、バレたらギルドから一発でBANされるにゃ。⋯でもそこは町長にゃ」


「権力者ってイヤだね」


 金があればなんでも許されると思っている人種だ。あまり関わりたくない。


「まあ、今日は帰ってオヤブンに相談して、明日にはギルドに依頼が出るはずにゃ。それまではゆっくりするにゃ。

 ⋯あ! おねーさん! フランクフルト追加にゃ! 卵焼きもつけてねー!」


 それにしても、ウィルテはよく食べるなぁ。


「食事ができるのは羨ましいよ」


「ユーデスは剣だから食べられないもんね」


 アタシとユーデスも小声での会話も慣れてきたものだ。


 ウィルテは時々、奇妙そうに見てくるけれど、単なる独り言だと思ってくれているみたい。


「今日はもう、めぼしい奴はいなさそうにゃ。これ食べたら帰るにゃ」


「そうだね」


「レディー? まさか、レディー・ラマハイムなのか?」


 いきなり後ろから名前を呼ばれ、アタシは振り返る。


「え? ウソ⋯⋯」


「信じられない。まさか生きていたとは⋯」


「にゃ!? イケメン!? だ、誰にゃ⋯?」


「フィーリー! 同じ故郷の人だよ!」

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