「か、かなり恥ずかしいんだけど……」
「いいねー。似合うにゃ♪」
ビキニアーマー……って、本当に存在するんだ。
よりによってウィルテが持ってきた物はこれだったのだ。しかも赤だ。
「でも、おヘソも剥き出しだし……防御力だって……」
こんなの着たことないし。
これに肩から外套って、普通に痴女だ。
なんかユーデスがガダガタと揺れてうるさい。
「魔力を使えない剣士ならフルアーマーでガチンコだろうけど、あんなの着て森の中とか歩くとか正気の沙汰じゃにゃいよ。魔力で防御できるんでしょ?」
いや、森の中でビキニアーマーもどうなのよ……
「たぶん…」
ユーデスが小声で「できるよ」とか言ってるけど……知らない。恥ずかしいものは恥ずかしい。
「女の武器を活かさないとにゃ。その格好ならサービスしてもらえる確率アップだし、薄着の冒険者はそれだけ手練だと思われるにゃ。ナンパしてくる野郎にゃ、鼻先に剣突き付けるだけでOK」
なぜか、ウィルテもアタシと色違いの青色のビキニアーマーだ。
さっきの格好もだいぶ露出してたけど、今はもっとひどい。
彼女と同じ格好だと思うと、余計に恥ずかしい。
「やっぱ他のがいい……」
「それに! 知名度がないと良い仕事を割り振ってもらえにゃいよ。その為に目立つのは基本にゃ!」
「そんなこと言ったって……」
町行く人々の視線が気になって仕方ない。
だってそうだ。半裸なのはアタシとウィルテだけだ。
どう考えても彼女に騙されているようにしか思えない。
でも、着てしまったアタシも悪い。
つい着てしまったのは、転生前はデヴで水着とか着れなかったから…
いや、正確には着る勇気がなかったからだ。だからこの身体なら着れるかなぁという出来心で…
すぐに脱ぐつもりで、お試しくらいの気持ちで着たら、ウィルテに無理やり外にと連れ出されてしまった。
ユーデスが「天国だ」とかなんとかさっきからうるさい。
人に聞かれたら……困る?
困るよね、たぶん。
「帰るのはもったいない! このままギルドで登録して、酒場で情報収集しようにゃー!」
「酒場? ギルドで仕事がもらえるんじゃないの?」
「ギルドの掲示板のことかにゃ? あんなの待ってる用じゃトーシローにゃ」
「そうなの?」
「ウィルテはギルドに張り出される前の依頼主を捜すにゃ。依頼に高い金が払うから、だいたい皆が酒場で相場の確認をしたりするにゃ。ギルドだと事務的に報酬設定するから、任せると割高になるし、かといって安く設定し過ぎると誰も依頼を受けにゃいし」
「ギルドで話し合って聞けばいいじゃない?」
「請負人がいる中で? “できるだけ値切りたいんだけど”〜みたいな? そんなマヌケいないにゃ。運営からも煙たがられるし、ケチな依頼人は請負人側が断るにゃ。報酬値切るような奴にろくなのはいにゃいし、請け負うのがいたとしても右も左も解ってないルーキーにゃ」
「へー。色々と難しいんだね」
「ま、かといって請負人が依頼人をギルド以外で捜すのは違法なんにゃけどね」
「え? それじゃマズイじゃないの…」
「依頼人がウィルテの話を聞いて、自分で報奨金を決めてギルドに行くのは勝手にゃ。常連じゃないと指名はできないけどにゃ。……でも、単発の臨時依頼のが報奨金は高いってのが常識にゃよ」
「そうなんだ…。あ、ギルドに行く前にちょっと手洗いに行きたいんだけれども…」
「あー、あそこがギルドにゃ。その裏手にあるよ。ウィルテは入口んとこで待ってるにゃ。早くしてね」
裏に周り、人気がないのを確認する。
「……なに? ユーデス」
「まさか、本当に冒険者ギルドに登録する気かい?」
「ええ。だって…お金もないし。この島から早く出てデモスソードを一刻も早く捜さないと…」
「金なら奪うとか何とかしてでも……」
「ユーデス」
「まあ、それは冗談だけれども、あまり人目に付くのはお勧めできないよ」
「どうして?」
「君の……魔路拡は成功はしたが、実のところ完全に回復したということじゃないんだ」
え? そうなの?
「魔力を放ったらまた閉じてしまう…だから毎日のように魔路を拡げる作業は必要なんだ」
「ちょっと待って。それなら毎日、あなたを抱いて寝ろと?」
「それは嬉しいことだけれど……まあ、そこは重要じゃない」
「重要よ!」
「一番の問題点は魔路拡すると、私は一定時間の休眠を必要するということなんだよ」
「あの話せなかった間……みたいに?」
「そう。常に私が覚醒していてサポートできるならいいけど、冒険者となるとそうはいかないだろう」
「……うーん」
「それに君の神経系統の問題もまだある。先に医者か何かに診てもらう方が……」
「でも、この小さな町にそんな医者が……」
「なにやってるにゃ! レディー! まさか“大”じゃないだろうにゃ!?」
「違うって! すぐ! いま行く!」
「……レディー」
「……だって、行かないわけにはいかないよ」