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019 船大工の護衛

 雨露に濡れた、樹木の青臭い香りが充満する中、アタシたちは足元に気をつけながら先を進む。


「木材って一口に言ったって、なんだっていいわけじゃあねぇ。船に使えるヤツは限られている。水を弾いて浮いて、かといって中身がスカスカじゃなく、長年海ん中で耐えられる丈夫さが必要だ。虫食いなんてあったらもっての他さ」


 グランダルさんは船大工の一員らしい。


 クントの森に来たのは、船材にする材木を選定するためだそうだ。


「今日、伐るんですか?」


「まさか。道具もねぇし、そもそも3人じゃ無理だ。伐るのは後日、仲間たちと来てからだよ。今日は木を選ぶのと、ルート確保だけさ」


 地図から顔を上げて、ガハハと笑う。


 見た目はイカついけど、意外と優しい人だ。聞けば普通に教えてくれる。


「ホントは森人エルフの方が詳しいんだがな。俺ら窟人ドワーフは石や鉄にゃ目端が利くんだがね。どうも木は勝手が違うわい」


「エルフは金じゃ動かないにゃー」


「そうだ。そんな変わり者が居ても、希少なせいか割高だしな。ギルドに登録してるヤツでも、伐採が目的だと引き受けてくんねぇ可能性が高い」


「ウィルテは格安のお買い得にゃー」


「あーあ、助かってるよ」


 グランダルさんはアタシを見やる。


「それに俺は運がいいことに、護衛が2人になってくれたしな」


 そう。アタシは非常食を勝手に食べてしまったお詫びと、仕事が終わったら町まで案内してくれることを条件に、グランダルさんの護衛を引き受けたのだった。


「ウィルテは魔法使いだ。レディーは剣士なんだろ?」


「…まぁ」


 グランダルさんはアタシの腰のユーデスを見て言う。


 正直、剣には自信ないし、騙しているような気がして申し訳ない。


 それに肝心のユーデスも喋らないままだし。


 かといって、こんな森の中で置いて行かれても困る。


 ホント、魔物が出てこないことを祈るだけだ。


「……剣にしてはみすぼらしいにゃ」


 確かにユーデスは光ってないと板片に見えてもおかしくない。


 刃もないから鞘もないし。これでどうやって斬るのかも不明だ。


「剣士の中には魔力で切断とかできるヤツもいるんだろ? オメェはできないのか?」


「にゃー。魔法使いと魔法剣士の魔力の使い方はまったく別物にゃー。これだからトーシローはイヤになるにゃ!」 


「悪かったな。戦闘は専門外だ。だから、オメェを雇ったんだしよ。

 …まあ、レディー。ここら辺はそんな強い魔物は出ねぇ。そんな緊張しないで大丈夫さ」


「え、ええ」


 本当にそうだといい。スライムとかくらいならアタシでも何とか倒せる。


「そうにゃ! タダ飯喰らいは許せんにゃ! しっかり働くにゃ!」


「なんでオメェが仕切ってんだよ。さあ、日が暮れちまう。行くぞ」

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