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015 剣にされた理由

「それでこれからどうするんだい?」


「…決まってるわ。お父さんとお母さんの仇をとる」


「あのデモスソードとやらを倒すのか……」


 ユーデスは「うーん」と考え込んでいるようだった。


「元神様だったら、あのデモスソードのことは知ってるんじゃないの?」


「うん? 神と言っても、私は冥界の神だったんだよ。世情には疎いんだ……封印されてたし」


「冥界?」


 なんかどこかで聞いた覚えが…


「それなら悪者?」


「悪者だって? 私が?」


「だって冥界って地獄のことでしょ? それに封印されてたって何か悪いことをしたから…」


「そんな偏見だよ! 冥界が地獄だって? とんでもない。少し寒いがいいところだよ」


 冥界がいいところ…そんなイメージはないなぁ。


「それに封印されたのも、そもそもが剣にされたのが原因で…そうだよ! 剣にされたのも誤解されたからなんだ!」


「誤解って?」


「天界から逃げ出した天使を匿ったんだ」


 天使って……そういえばさっき独り事でそんなことを言ってたな。


「なんで天使が逃げ出してきたの?」


「……それが…よく覚えてないんだよね」


「……覚えてない?」


「……うん。可愛い子だったとしか」


「……え? 可愛いだけで匿ったの?」


「え? 普通じゃない? 可愛いければ助けるでしょ。野郎だったら知らん顔してたけれど」


 なんだろ。本当にチャラ男だ。


 男の人は苦手だ。けど、見た目が剣のせいか、そこまで緊張しなくても喋れている。


「……でも、どうして剣にされてエアプレイスに封印されてたの?」


「剣にされたのは天使を匿ったからだよ。神々が罰と称して、美青年だった私をこんなみっともない姿に!」


「美青年だったの?」


「そうさ。レディーにも見せたかったなぁ」


 それはちょっと見たいかも……。


 でも、もし本当にイケメンだったら、私は普通には喋れないな。


 デヴの時みたいに汗バーッてかいちゃって、どもっちゃうだろうな……。


「エアプレイスに封印されたのは、私の魔力が利用できると思った君の御先祖の仕業じゃない? もう何百年も前の話だし、いきなり捕まって、気づいたら…あの地下の小部屋だったからね」


 なんだかあやふやな情報だな。


 でも、冥界の神でも悪い神ではないらしいし、なんか魔剣として凄い力を持っているみたい。


 だったら……


「ねぇ、ユーデス」


「なんだい?」


「力を貸してほしいの。あのデモスソードを倒すために」


「いいよ」


 え? 即答?


 なんか軽いんだけど……


 逆に不安になってくるわ。


「そんなに簡単に返事していいの?」


「私に選択肢はないでしょ。自分じゃ動けないし、君に置いてかれたら何もできないしさ」


 まあ、それは確かにそうか。


「それにさぁ、あのデモスソードってのも私のことを探してるみたいだったし……いいや、考えただけで怖気が走るよ! 男の手には握られたくない!」


 女は好きだけど、男は嫌い……か。


 デモスソードが男かどうかはよく解んないけど。


「よし! なら、私に触られる前に倒してしまおう!」


「……あんまり深く考えてないの?」


「いいや。考えてるよ。それに善行を積めば元に戻してやるだなんて、偉そうなニューワルトに言われたしね。まったく。それならやる以外の選択がないじゃないか」


 ニューワルトってのは、確かこの世界を創った創世神の名前だ。


 創世神によって魔剣に変えられてしまった冥界の神。


 私は凄い味方を手にしたのかもしれない。


 それと、元に戻れる手段があるんだ……


 うん。それなら利害が一致するってわけね。


「あと、もうひとつ理由があるよ」


「なに?」


「君がカワイイからさ」


 いや、それにしても本当に変な剣だなぁ……

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