「それでこれからどうするんだい?」
「…決まってるわ。お父さんとお母さんの仇をとる」
「あのデモスソードとやらを倒すのか……」
ユーデスは「うーん」と考え込んでいるようだった。
「元神様だったら、あのデモスソードのことは知ってるんじゃないの?」
「うん? 神と言っても、私は冥界の神だったんだよ。世情には疎いんだ……封印されてたし」
「冥界?」
なんかどこかで聞いた覚えが…
「それなら悪者?」
「悪者だって? 私が?」
「だって冥界って地獄のことでしょ? それに封印されてたって何か悪いことをしたから…」
「そんな偏見だよ! 冥界が地獄だって? とんでもない。少し寒いがいいところだよ」
冥界がいいところ…そんなイメージはないなぁ。
「それに封印されたのも、そもそもが剣にされたのが原因で…そうだよ! 剣にされたのも誤解されたからなんだ!」
「誤解って?」
「天界から逃げ出した天使を匿ったんだ」
天使って……そういえばさっき独り事でそんなことを言ってたな。
「なんで天使が逃げ出してきたの?」
「……それが…よく覚えてないんだよね」
「……覚えてない?」
「……うん。可愛い子だったとしか」
「……え? 可愛いだけで匿ったの?」
「え? 普通じゃない? 可愛いければ助けるでしょ。野郎だったら知らん顔してたけれど」
なんだろ。本当にチャラ男だ。
男の人は苦手だ。けど、見た目が剣のせいか、そこまで緊張しなくても喋れている。
「……でも、どうして剣にされてエアプレイスに封印されてたの?」
「剣にされたのは天使を匿ったからだよ。神々が罰と称して、美青年だった私をこんなみっともない姿に!」
「美青年だったの?」
「そうさ。レディーにも見せたかったなぁ」
それはちょっと見たいかも……。
でも、もし本当にイケメンだったら、私は普通には喋れないな。
デヴの時みたいに汗バーッてかいちゃって、どもっちゃうだろうな……。
「エアプレイスに封印されたのは、私の魔力が利用できると思った君の御先祖の仕業じゃない? もう何百年も前の話だし、いきなり捕まって、気づいたら…あの地下の小部屋だったからね」
なんだかあやふやな情報だな。
でも、冥界の神でも悪い神ではないらしいし、なんか魔剣として凄い力を持っているみたい。
だったら……
「ねぇ、ユーデス」
「なんだい?」
「力を貸してほしいの。あのデモスソードを倒すために」
「いいよ」
え? 即答?
なんか軽いんだけど……
逆に不安になってくるわ。
「そんなに簡単に返事していいの?」
「私に選択肢はないでしょ。自分じゃ動けないし、君に置いてかれたら何もできないしさ」
まあ、それは確かにそうか。
「それにさぁ、あのデモスソードってのも私のことを探してるみたいだったし……いいや、考えただけで怖気が走るよ! 男の手には握られたくない!」
女は好きだけど、男は嫌い……か。
デモスソードが男かどうかはよく解んないけど。
「よし! なら、私に触られる前に倒してしまおう!」
「……あんまり深く考えてないの?」
「いいや。考えてるよ。それに善行を積めば元に戻してやるだなんて、偉そうなニューワルトに言われたしね。まったく。それならやる以外の選択がないじゃないか」
ニューワルトってのは、確かこの世界を創った創世神の名前だ。
創世神によって魔剣に変えられてしまった冥界の神。
私は凄い味方を手にしたのかもしれない。
それと、元に戻れる手段があるんだ……
うん。それなら利害が一致するってわけね。
「あと、もうひとつ理由があるよ」
「なに?」
「君がカワイイからさ」
いや、それにしても本当に変な剣だなぁ……