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012 闇の魔剣ユーデス

 さらに深くなるにつれて、通路はより狭くなり、まるで天然の洞窟の中にいるような感じになっていく…


 そして辿り着いた先に、丸い噴水のある公園のような、場違いとも思える場所に出た。


 地下なのに関わらず、部屋全体が白く光って明るい。


「不思議…浮いている…」


 噴水の上にゆっくり回転しつつ浮かんでる1本の黒木…いや、それは直剣だった。


 変わった紋様が刻まれていて、回転に合わせて七色に光っている。


「これが…魔剣?」


「やあ、こんにちは。お嬢さん」


「…え?」


 誰かに呼びかけられ、私は周囲を見回す。


 でも、おかしい。誰もいない。


「こっちだよ。こっち。ほら、目の前だ」


「……もしかして、剣から?」


「フフ。だいぶ顔が近いね。このままだとその可愛いお顔にキスしてしまいそうだよ」


「あ!」


 確かに紋様をよく見ようとして近づきすぎていた。


 私は慌てて距離を取る。


 …でも、私を可愛いだなんて。


「…おや。久しぶりに“人”と会ったと思ったら、魂の形が奇妙だね。もしかして転生者とかいうアレかい?」


 私はひどく驚く。


 だって、どうして解るの?


「そんなに驚かないでくれ。元“神”だと色々視えてしまってね。ちょっと頑張れば服の中まで視えて…」


「えッ?!」


 私は慌てて自分の胸元を抑える。


 そりゃ小さいけれども…見られていいわけじゃない。


「フフ。冗談だとも。そんな透視能力まであるわけじゃないさ」


「でも、“神様”なの? なら、助けて!」


「助けて? 助けてほしいのはこちらの方で…」


「お願い! 父さんが…父さんまでも殺されてちゃう」


 私が泣いているのを見て、魔剣はしばらく黙った。


「…神様でも、魔剣でもいい…お願いだよ…」


「ユーデスだ」


「…え?」


「私の名前は“闇の魔剣ユーデス”だよ」


 ユーデス?


 …なんだか神様とか剣っぽくない。


 まるで人の名前みたいだ。


「だが、見ての通り何ができるわけでもない。ただの剣さ。喋れるだけのね」


「魔剣なんでしょ? …風を出したりできる」


「封印さえされてなきゃね」


「封印?」


「そうそう。それが私がこんなところへずっと居る理由だよ。たまに神官の老人が見に来るくらいで話もしないさ。…だから君みたいなお嬢さんが来てくれるのは大歓迎だよ」


「そんなこと言っている場合じゃない! だから…」


「うーん。その気持ちも解らないでもないが…」 


「こんなノンビリ話していられないのよ!」


「あ! ちょ、ちょっと待って!」


 私は手を伸ばし、剣の柄を掴む。


「…私を掴んだ?」


 一刻も早く、父さんの元へ戻らなきゃ!


 その一心で、私は剣を噴水から引っ張った。


「え? ふ、封印が…消えた? き、君、もしかしてエアプレイスの巫女…なのか?」


 思ったより軽い。私の手の内でユーデスはなんだか驚いているようだった。


「知らない! 私もなんかその辺の話は少ししか聞いてないし!」


「正統な巫女じゃないの? 君は…いったい何者なんだい?」


「転生前は単なるデヴよ! 今はレディー・ラマハイム!」 

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