世界異動サービスなるものがあるらしい。
お金さえ払えば、こことは違う別世界へと異動させてくれる…そんな話がやたら最近広まっていた。
私は整形手術やダイエットのために貯めに貯めていた銀行口座の通帳を持って、ある雑居ビルの前に来ていた。
ネットで調べるとここが世界異動サービスをしてくれる店の場所らしかったからだ。
「お客様のご希望ですと…単なる異動ではありませんね。簡単に言うと“転生”となります」
私が書いたアンケート用紙に目を通していた店員さんかそう言う。
「…な、な、なにが、ち、ち、違うんでしょう?」
コミュ障の私は吃りながら聞く。
正直、店員さんでも男の人と真正面から話すなんて嫌だ。苦手だ。無理だ。
「赤ん坊からやり直す…というのは、あまり例がありません。だいたいの方が、ある程度のスキルや能力を獲得した若者への異動を望むので…」
こちらをチラッと見た。
きっと心の中で笑ってるに違いない。
だって、デヴだもん。「うあー。この女、太ましいな。異動したいのも解るわー」って、心の中で笑ってるに違いない。
「えーっと、他のご要望を見る限りですと…“痩せてるだけ”…でいいと?」
「は、は、は、はいッ!」
声が裏返った!
恥ずかしい!
穴があったら入りたい!
ここから消え去りたい!
「…お客様のご予算枠ですと、それこそスリムな貴族の令嬢という選択肢も選べますが」
「む、む、ムリ…で、で、です」
「ムリですか」
「だ、だ、だ、だって…性格は…あ、あ、あ、私のまま……な、なんですよ、よ、よ、ね…?」
「ええ。記憶は異動先の身体と混在しますが、人格はお客様のままですよ」
「そ、そ、そ、それじゃ困るんです!」
あー、手が汗ばむ。
たくさん汗かいてる。
臭いかな? 臭いよね?
臭かったらゴメンナサイ!
「こ、こ、この性格…、な、な、なお、直そうと…して……た、だ、で、だ、ダメで……」
「なるほど。イチからやりなおしたい、と」
「は、はい…。だ、だから、貴族…とかじゃなくて、身体…もっと…動かす…農民…の、娘…とかで……」
そうだ。貴族なんかになったら、私はきっと食っちゃ寝、食っちゃ寝しちゃうだろう。
あー。そしたら、今とまったく同じだ……
「かしこまりました。お客様のご要望にお応えします。すべて、この『