テーブルで亞莉子が緊張しているとパンの焼けた香ばしい匂いがしてきた。そちらを向くと竜三郎が片手にした大きな
「お待たせしてすみません。眠りネズミさん、チェシャ猫さん、それからアリスも。冷めないうちにどうぞ召し上がってください」
竜三郎が慣れた手つきで料理の入った3人分の皿をテーブルに並べてゆく。よく焼けたトーストの上には真っ赤な苺のジャムが、ふんわりとしたひよこ色のスクランブルエッグの隣には茹でたくし切りのじゃがいもとカリカリに焼かれたベーコンがのっていた。
「あらあら、今朝の朝食もとっても美味しそうね。いただくわ」
「いただきまーす!」
「い、いただきます……」
亞莉子はすみれと鼠太につられて手を合わせ、目の前に置かれたフォークを使ってほんの少しスクランブルエッグを取って口に運ぶ。
「……おいしい」
ぽつり、と思わず亞莉子の口からつぶやきが漏れる。その言葉に竜三郎が反応して「それは良かった」とほっとした表情で返す。
「食後にデザートもあるからね。食べ終わったら声かけて」
「う、うん」
亞莉子にだけ聞こえるように竜三郎が小声で囁く。亞莉子がうなずくと、竜三郎はテーブルの上のすみれと鼠太のグラスが空になっているのに気づいてお代わりを勧める。
「ボク、さっきのやつお代わりでお願いします。チェシャ猫さんは?」
「そうねえ……じゃあ私も同じものにしようかしら。お願いできる?」
「ええ、承知しました。すぐにお持ちしますね」