スーパーと本屋で買い物を済ませた俺達は、ご満悦の状態でマンションに戻った。一時間以上はゆっくり休めた波留も、戻ってきた頃には少し顔色が戻ったように見えて一安心だった。
「大智さん、ごめんなさい。私ったらすっかり甘えてしまって」
「いやいや、全然いいよ。むしろ俺も今まで気が利かなくて申し訳なかったよ。心って元気が有り余りすぎて、マジで大変だな」
店に着くなり店内を駆け回って、片時も目が離せなかった。知らない子供に声を掛けたり、カートに轢かれそうになったり、店内の商品に手を伸ばして落としそうになったり。日頃面倒を見ている波留に、改めて尊敬の意を表したくなった。
「今度からは俺が一緒の時にまとめ買いをしたり、週に何度か弁当の日を設けるか。すっかり波留に甘えてしまってて、本当にごめんな」
「そんな、大智さんは十分色々してくれてるよ? なのに私ったら、出来もしないのに働きたいなんて言って」
憂いの表情のまま視線を落とす波留を気遣ってなのか、自分用に買ったお菓子を抱えたまま、波留に差し出す心。
「マンマァ、あーとー?」
「心ちゃん……!」
「こ、心!」
優しくて可愛すぎる我が子の行動に、親バカ二人は甲高い声を上げながら娘を抱き締めていた。
可愛い、可愛い、可愛いぞー……(語彙力なし)
「大智さんも心も、本当にありがとう。あの、もし大智さんが迷惑じゃなければ……仕事の相談、聞いてくれるかな?」
これまた申し訳なさそうに上目で見つめる可愛子ちゃんがもう一人。そんなの決まってるじゃないか。
「波留の話なら三徹後でも聞きたいよ。話してくれた方が嬉しいな」
「……ありがとう」
こうして俺達は買ってきた弁当と波留が作ってくれたサラダとスープを食卓に並べて、食事の挨拶を交わし合った。
「実は……覚えないといけないことが多いってのもあるんだけど、それ以上に困っていることがあって」
主に品出しを担っている波留だったが、その際にやたらと声を掛けてくる営業さんがいるとか、いないとか。
「最初はただの挨拶かなと思っていたんだけど、やたらと近づいてくるって言うか、ベタベタとその、触れてくるっていうか」
——あぁん? 俺の波留にそんなことをする輩がいるのか⁉︎
許せん、そんな輩には社会的鉄槌と本物の鉄槌をお見舞いして、再起不能になるまで追い詰めなければ。
「誰かに相談したくても、職場の人は「自慢?」ってろくに話も聞いてくれなくて。それどころか私が男を誑かしてるって嫌な噂を流したり」
「はぁ? 何だそのふざけた職場は! 今すぐ辞めろ、訴えてやる!」
「だ、ダメだよ! もしかしたら私にも原因があるかもしれないし……」
波ー留ー……! それは優しさとか責任感が強いってことにはならない。悪いことは悪い。それをちゃんと主張できないと、ただのお人好しの泣き寝入りになってしまうんだ。
優しい波留が傷ついて、嫉妬まみれのお局がのうのうと過ごしている事実が許しがたかった。
「その営業マンの名前は分かる? 俺が店長に話してやろうか? 訴えるまでは行かなくても、近づかないように配慮してもらうとか」
「そう言うこと、出来るの? えっと……確か晴れマーク会社の
————ん?
あれ、気のせいだろうか? 日当ってどこかで聞いたことがある気がするんだが?
「この人のせいで女性の人達に避けられているのに「職場で辛い事があったらいつでも話を聞いてあげるからね」って連絡先を渡してきたり、飲みに誘ってきたり……。ちょっと困ってたんだ」
渡された名刺を見て、俺は血の気が引いた。
コイツ……メロに手を出して捨てた糞不倫野郎じゃないか?
あの野郎……っ、メロには三百万の慰謝料を請求しておきながら、今度は俺の愛する妻に手を出そうとしているのか?
ぞわぞわと虫唾が走り、腑が煮え返る勢いだ。コイツにはキツい一髪をお見舞いしてやらねばならない。
「波留……申し訳ないけど、数日間だけ我慢してくれないかな?」
「え、我慢……?」
「このボイスレコーダーで証拠を取ってもらいたいんだ。大丈夫、俺も数日間休みを取って、波留の職場に事情を話して付き添うから」
佐久間にも連絡を取って、念入りに計画を立てなければならない。
俺は興奮して上気した気持ちを落ち着かせようと、懸命に呼吸を繰り返した。それでも強い