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第2話 有能スレンダー(ドS)秘書

 俺の会社は、中小企業を対象にしたタスク管理を提供しているベンチャーだった。いわば秘書や受付事務員のような仕事を遠隔で手助けをする——と言ったものだった。


 人手不足で頭を悩ませている会社や個人業の人材を担うことができると、それなりに需要のある企業となってきた。

 これもあれも全部、有能な社員のおかげである。特に共に起業して支え続けてくれた友人の存在は欠かすことができない。


木梨きなし社長、今頃出社ですか? 随分とごゆっくりでしたね」

「野々ののはらくん……相変わらず手厳しいなぁー。仕方ないじゃないか、俺の愛しのワイフが可愛過ぎるのがいけないんだよ」


 二人きりの社長室にて。

 赤いルージュが目立つ、気の強そうな容姿。波留に比べればスレンダーだが、出るところは出たSっ気の強い美女、野々ののはら メロ。彼女が俺と共に起業した友人で、今も右腕として支えてくれる美人秘書だ。


 おーっと、こんな美人が傍にいて、やましい事をしているんじゃないかって疑う奴は少なくないだろう。


 確かに俺とメロは、そんな関係になっていたこともある。セフレ以上恋人未満と言ったところだろうか。


 だが、波留と出逢ってからは他の女性にうつつを抜かすようなことはしていないし、メロとも清い関係を貫いている。


 何よりもメロはモテる上にデキる女だ。

 俺のような男に構っている暇があるならば、他の男と関係を持っていた方が彼女の為だとわかっているのだ。


 肩書こそは秘書であるけれど、現場によく顔を出して、多くの社員から慕われているのも俺ではなくメロの方だ。


「ったく、奥様に出逢ってから、随分と詰まらない男になってしまいましたね。昔の貴方はもっと野心に溢れていて魅力的だったのに」

「おいおい、それは聞き捨てならないなぁ。むしろ守るモノが増えて、俺は前よりも貪欲になったつもりなんだけれどなぁ」


 だが、メロは俺のネクタイを掴んで、嘲笑するように口角を引き攣らせた。


「小娘に尻尾を掴まれてキャンキャン啼いているような男に、私は興味がないのよ……! あーぁ、保守に回っている男よりもガツガツしていた頃の貴方の方が恋しいわ」


 おいおいおいー、随分な言い草だなぁ、メロめ。


 確かに、独身を貫いているコイツは、昔と変わらず魅惑的で良い女だった。

 起業し始めの頃は、狭いアパートで隣人に聞こえないようにと、声を押し殺しながら獣のように求め合ったことがあったが、それも今となっては良い思い出だ。


(コイツはバックから思いっきり突き上げると悦んでいたんだよな……。今も変わんねェのかな?)


 長身だからこそ出来た——新体操の選手のように立ったまま片足だけを上げて、Y字バランスって言うんだっけ? あの体勢だとよく見えたんだよな……。


 小さな波留相手では出来ない体位を思い出して、下心が疼いた。


 そんな俺の心中を察したのか、不審な視線を向けたメロが怪訝な顔付きで悪態をついた。


「鼻の下が伸びてる。貴方がどれだけ大好きな奥様と営んでいようと勝手ですが、公私混同しないで下さいよ? 気持ち悪いったら、ありゃしない……!」


 うぐっ、胸を抉る辛辣な言葉……!

 だが、嫌ではない——なんて言うと、冗談では済まないくらいになじられると思うので、ここまでにしておこう。


「ところで今日の予定は?」

「今日は会議に出席して、その後は皆でミーティングを兼ねた昼食会よ。しっかりして頂戴、木梨社長」


 メロは俺の緩んだネクタイを結び直して、魅了するように笑みを浮かべた。

 あぁ、コイツ、良い女なんだよな。波留の次くらいに。


 もしコイツと結婚して子供が産まれてたら、どうなってたかな?


(なーんてな、んなこと考えても仕方ねぇんだけどな。大丈夫、俺と波留の子なんだから、きっと心も可愛くなる。絶対にだ)


 だが、もし……このままどっちにも似なかった場合、俺は心のことを愛することができるのだろうか?


 ———……★


「元カノが近くにいる状況を波留は知ってるのかって? いや、メロは元カノじゃねぇーから(笑)」

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