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第33話:地底湖と二つ目のゲート

 秘密の抜け道を教えてあげる――。


 そんなラプラスの言葉に誘われるように、その日の夜にビビとアミーナの2人は、スラムから僅かに離れた雪原にまでやって来ていた。


「ここが地底湖の入り口です」


 そして2人が案内されたのは、見た目には殆ど雪に埋もれてしまっている小さな小屋。ラプラスがその小屋の壊れかけの扉を開けると、内部は真っ暗だった。


「どうやら昔に作られたこのあたりを管理する為の施設みたいです。灯りがあった方が良いですね」


 言いながらビビがどこからか懐中電灯を取り出すと、ラプラスは驚いたような目でビビを見ていた。


「凄い……。そんなランプがあるんですね」

「これくらいは、今の世界でも手に入るくらい簡単なものですよ。それでここから何処に行けば……」

「あっ……、はい、こっちです……」


 ラプラスが軽やかな足取りで小屋の奥へと行けば、そこには地下に向かってポッカリと穴が空いていた。


「これは地下室ですか? なるほど……、地上は雪で覆われていますけど、地下なら雪の心配はありませんしね」

「はい。だから吹雪の時にはスラムの人も良く来るんです。それで、こっちが地底湖の入り口です。付いて来てください」


 ラプラスに先導されるように地下へと降りていくアミーナ達。長い階段を降り続けて、程なくして2人が見つけたのは、開けた空間。


 古い柵が円形に建てられたその部屋は更に下まで見えるようになっている吹き抜けのようで、ビビとアミーナがその柵から身を乗り出すように階下を見れば、青い光を放っている水が溜められていた。


「な、なんだこれ……。これもロストテクノロジーなのか?」

「い、いえ……。これは……もしかしてシェルターの管理システムの中枢でしょうか?」


 驚きで目を丸くするビビ。それもその筈。2人の辿り着いた地下には膨大な量の水が湖のように溜まっており、その湖のそこでは幾つものランプを灯した機械が沈んでいる。


 青い光は水中の機械が発光している光りだったのだ。


「一体この場所は何なんだ?」

「地底湖だよ? ドームの農園の水とか、家畜用の水なんかは、ここから吸い上げているの」


 言いながら、「ほら」とラプラスが指を差せば、なるほど、彼女の言う通りに湖の中には幾つものポンプが下ろされて、水を吸い上げているのか駆動音を響かせていた。


「あぁ……なるほど。これはたぶん……」


 その光景にビビが湖の水を一口飲んでみる。そしてビビは驚きで目を丸くしていた。


「驚きました。これはやっぱり浄水器なんですね」

「浄水器?」

「はい。黒岩城も地下から水を吸い上げていましたが、ここは黒岩城以上にきれいな水を使っているんです」

「水? そんなもんどれも一緒だろ? 雪を溶かせば手に入るんだから」


 アミーナの言葉に「わかってませんねぇ」とビビは小言を漏らす。


「確かにただ水を手に入れるだけなら、雪をとかせば問題は無いです。でもですねぇ、放置区域の土壌が汚染されていたように、空気も少し汚染されているんです。だから降っている雪にも微量ではありますが、身体に良くない成分が含まれています」

「そうなのか?」

「はい。もっとも……地下で分解できるレベルの微量なものなので、黒岩城のように地下水を吸い上げているなら問題はありません。ただ、それでは水の使用には限界があります。その問題を解決するのが、この地底湖の浄水器なんですよ」


 ビビの分析によると、地底湖の浄水器は外で降っている雪を元に有毒物質を取り除いて綺麗な水を作り出しているらしい。


「もっとも、機械の老朽化に耐えられなかったんでしょうね。元はポンプが機械に直結されていたのが、ポンプから漏れ出した水が、地下を満たしていったんでしょう。その水が溜まりに溜まって湖のようになって、浄水器自体まで沈んだんですけど、はそれでも機能を失わずに今日まで動き続けているというわけです」

「それで水の中に機械が……。いったいどれくらいの間、水が漏れ続けていたんだか……」

「私としては水没していたも壊れていないことに驚いています。シェルター用として、こういった事態も予想していたのかもしれませんね」


 ただただ感心する2人。しかし、2人を導いたラプラスは状況を理解しているようには見えなかった。


「それで……、ドームの中にはどう行けば良いんだ?」


 地底湖についての考察を終えて、アミーナはジェノの救出の為に先を急ごうとする。


 地底湖から伸びたパイプはそれぞれに四つの地下通路に向かっていて、パイプを辿って地下通路を歩いて行けば、目的のドームへと辿り着けそうだ。


 しかし、そんな彼女に待ったを掛けたのはビビだった。


「ちょっと待ってください。ここがもしも、シェルターの管理システムの中枢なら……。ラプラスさん、こういうアーチのある部屋がありませんか?」


 ビビが取り出したのは、いつか情報屋に見せた写真だ。するとラプラスは心当たりがあったのか「こっちだよ」と2人が案内してくれる。


 2人が案内されたのは僅かにさび付いたボロボロの金属の扉。アミーナがビビに代わって扉をあける。


 そして甲高い音と共に開かれた埃まみれの部屋の中央には、アミーナが放置区域で目にしたものとほとんど変わらないゲートが鎮座している。


「これでジェノさんを確実に助けられます!」


 ゲートは見た目には傷は無い。ビビはその状況に満面の笑みを浮かべて、喜びを表現していたのだった。

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