学園長室の奥にある部屋で摩耶はドアを開けた瞬間に病葉の体に飛びついた。
「ひ、比良坂さんダメですって!」
「いや……慣れてるから大丈夫だよ倉田くん」
病葉は摩耶を受け止めたものの床に倒れてしまう。黒いローブの下にいつもの絵画ではなく迷彩柄に植物の葉が組み合わさったデザインのシャツが見えている。
「もう体、治った?」
「ああ、うん……ぼちぼちかな。やっぱり甘崎先生の薬でも内臓までは戻せないみたいでさ」
摩耶に抱きつかれたまま病葉が答える。ローブから腕を出すと黒い骨ではなくしっかりと皮膚と筋肉がついている。
「ほらここ、触ると中身がないのがわかるだろう」
病葉が摩耶の手を取り、自分のシャツの上から腹や胸を触らせる。触った感触は間に筋肉はあるもののまさに骨と皮だった。どことなく薄っぺらいかんじがするのだ。
「じゃあまだ、時間かかるんだね……ちょっと残念かも」
摩耶が病葉の肌に触れながら残念そうに言った後、倉田に聞こえないくらい小さな声でつぶやく。
「先生……あの約束、忘れてないよね」
「ああ、もちろんだよ。もしかして今かい?」
病葉が小声で尋ね返すと摩耶は首を横にふった。
「……今は大丈夫。先生の体が完全に戻るまで我慢するから」
「そうかい。本当に大丈夫。無理しなくてもいいんだよ?」
病葉が再度尋ねると摩耶は「大丈夫」とだけ繰り返して唇をきつく噛みしめた。