博士は手際よく、机の上に並べられた小さな装置をいくつか操作し、すぐに新しい術式を転送してくれることになった。
「君たちがこれから調査を進めるには、戦闘だけでなく移動の手段やサポートが必要だろう。これらの術式をインストールしておくといい。」博士は、スマートフォンに手を伸ばし、魔力を流し込みながらひとつひとつの術式を転送していった。
「まず、テレポート。」博士が言うと、スマートフォンの画面が一瞬にして光り、アプリのアイコンが表示される。テレポートの術式が無事にインストールされると、画面に「テレポート完了」の文字が浮かび上がった。
「これで、君たちは短時間で遠くの場所に移動できる。必要な時に役立つだろう。」博士は続けて、次に別の術式をインストールする。
「次は、マジックミサイル。」博士が説明を始めると、スマートフォンの画面が再び光り、術式が追加された。画面には、エネルギー弾のようなイメージが表示される。
「これは遠距離攻撃に使える。矢のように的確に飛ばせるから、正確な狙いを定めて発射できる。」博士がさらにいくつかの術式を続けてインストールしていく。
「ヒールコンディション。」その言葉と共に、回復術式がスマートフォンに転送される。画面には、手のひらをかざしたようなアイコンが現れ、ほんのりと緑色の光を放った。
「これは君たちの体力や状態を素早く回復するための術式だ。傷が浅い場合や、疲れが溜まった時に重宝する。」博士はさっと次に進む。
「ヒートウェブ。」この術式もすぐにスマートフォンにインストールされた。今度は、画面に火のような模様が現れ、その周りに炎が渦巻くイメージが浮かび上がる。
「これは攻撃の一つ。周囲に火を広げ、相手を包み込んで火力で攻撃する。範囲攻撃にもなるから、複数の敵がいる時に便利だ。」
次にインストールされた術式は、アイシクル。画面に氷の槍のようなビジュアルが現れる。
「アイシクルは冷気を集めて鋭い氷の槍を作り出す術式だ。敵を凍らせることもできるので、逃げ道を塞ぐ時に使えるだろう。」
そして最後に、ウィンドアローが追加されると、画面には風の矢が描かれたアイコンが表示された。
「ウィンドアローは、風を操る術式だ。風の矢を飛ばし、敵を吹き飛ばすことができる。また、風の力で遠くまで矢を届かせることができるため、戦術的に有効だ。」博士は説明を終えると、満足そうに頷いた。
「これで、君たちには移動、攻撃、回復、そして防御の手段が整ったことになる。これらの術式を駆使すれば、どんな状況にも柔軟に対応できるだろう。」博士はしっかりとした口調で言った。
「ありがとうございます、博士。」俺は深く頭を下げ、スマートフォンに新しくインストールされた術式を確認しながらつぶやく。「これで、準備が整ったな。」
ナツメも嬉しそうにスマートフォンを見つめながら、「これで一歩進んだ気がするね。ダンジョンに入る前に、少し練習しておきたいね。」と言った。
俺はその言葉にうなずきながら、「それもそうだな。実戦に使う前に、まずはしっかりと使い方を覚えておこう。」と答える。
博士は二人の様子を見守りながら、満足そうに微笑んだ。「準備が整ったら、いつでも君たちの次の任務に出発していいよ。君たちの活躍を期待している。」
準備が整い、俺はナツメと共に支度を整える。背中のリュックを再度確認し、必要な道具や補助薬、そしてスマートフォンにインストールした術式が確実に使えるよう、手に持った。最後にナツメも自分の装備を確認し、軽く頷いた。
「よし、行こうか。」ナツメが言ったその瞬間、俺は覚悟を決め、深呼吸をする。ダンジョンへの再度の出発を果たすため、まずは新しく覚えたテレポート術式を試すことに決めた。
「初めて使うから、ちょっと不安だな。」と、ナツメも少し緊張気味に言った。
「俺もだ。でも、博士が言ってた通り、これを使いこなせれば、相当便利だろう。」俺はスマートフォンを手に取って、画面に表示された「テレポート」のアイコンをタップする。
瞬間、画面に青白い光が広がり、意識がふわりと浮き上がった。画面の上に「詠唱準備中」の文字が現れる。俺は呪文の詠唱を始める。
「異界を繋げ、道を示せ。風の導き、星の祝福、そして力の契約。テレポート!」
俺が言い終わると、スマートフォンから一陣の風が立ち、周囲の景色が歪み、次の瞬間にはまるで空間が切り替わったかのように視界が一変した。
風が吹き抜ける音が耳に響き、視界には見覚えのあるダンジョンの入り口が現れる。どうやら、テレポートは成功したようだ。
「うわ、これすごい!」ナツメが驚いた声を上げる。
俺はその様子を見て、安堵の息をついた。「無事に成功したな…これなら、今後も効率的に移動できる。」
周りの景色を改めて見回すと、ダンジョンの入り口が目の前にあるのが確認できる。まさに、ここから先へと続く道だ。
「さあ、行こうか。」俺はスマートフォンをしまい、リュックの中身を再度確認してから、ダンジョンの中に足を踏み入れた。
ナツメも同じように準備を整え、俺に続いて進む。「ここから先がどうなっているのか、少し不安だけど…気をつけよう。」
「うん、でも今の俺たちなら、大丈夫だろ。」俺は自信を込めて言うと、まずはダンジョンの入り口に一歩足を踏み出す。
ダンジョンに足を踏み入れたところで、突然スマートフォンが震えた。画面に「倉橋博士」からの通信が表示される。すぐに受信ボタンを押すと、博士の顔が画面に映し出される。
「おお、君たちか。ダンジョンの中に無事に到着したようだね。」博士は、少しリラックスした様子で話しかけてきた。
「はい、無事に到着しました。ただ、これから先に進むところです。」俺が答えると、博士は少し黙ってから話を続けた。
「それなら、いくつか新しい術式を追加しておこう。君たちの安全を確保するためだ。すぐにインストールするから、少し待っていてくれ。」
画面が一瞬暗くなり、しばらくしてから新たな術式がインストールされる通知が届いた。画面にアイコンが次々と現れ、俺はそれを確認しながら名前を口にする。
「アンチドーテ。」最初に表示された術式の名前に、少し驚く。「これは…毒を防ぐ術式?」
博士は頷きながら説明する。「その通りだ。ダンジョン内には毒を使う敵も多い。これを使えば、毒の効果を防ぐか、軽減することができる。」
「助かります。」俺はホッとしながら、そのアイコンをタップして新しい術式を確認した。
「次は、サーチ。」博士が続けると、画面にサーチのアイコンが現れた。「これで、周囲の敵やアイテムを感知できるようになる。目の前の敵が隠れている場合でも、感知できるのが大きなポイントだ。」
「これも役立ちそうですね。」ナツメがつぶやき、俺はその術式を心に留めた。
続いて、アナライズという術式がインストールされた。「アナライズ?」俺は少し首をかしげる。
「これは敵やアイテムの詳細を分析する術式だ。敵の弱点や能力を素早く把握できるから、戦闘が格段に有利になる。」博士はわかりやすく説明してくれた。
「なるほど、敵の特徴がすぐにわかるのは大きいですね。」俺は納得しながら、その術式をインストールする。
そして最後に、ウォールという術式が現れた。「ウォール。」俺は少し疑問に思いながらも、スマートフォンの画面を見つめる。
「これは防御術式だ。地面に障壁を作り、敵の攻撃を防ぐことができる。」博士は軽く説明を加える。「これで戦闘の際、少しでも君たちが有利になるだろう。」
「本当に助かります。」ナツメが感謝の気持ちを込めて言うと、俺も頷く。
「これで、君たちの手札はかなり強化されたはずだ。ダンジョンの探索、頑張ってくれ。」博士は満足げに言った。
「ありがとうございます、博士。」俺は深く礼を言い、再度画面を閉じる。
「これで準備が整ったな。」俺はナツメに向かって言うと、新しくインストールした術式を確認しながら、再びダンジョンの中を進み始める。
「うん、これでどんな困難にも対応できそう。」ナツメは安心した表情を浮かべ、俺の後を追ってきた。
「よし、行こう。」我々は、ダンジョンの深部へと向かって歩みを進める。