だが、綺麗に別れたと思っていた俺達だが、予想に反して寧々から電話が掛かってきて大変だった。
確かに思わぬ妊娠で不安かもしれないが、これは彼女が選んだ結果なのだ。
受け入れるしかないだろうと説得しようと思っていた時だった。
『庵くん、助けて……。私、向こうの親に反対されてて……こんな妊娠認めないから堕ろせって言われたの』
「——え?」
堕ろせって、何を言っているんだ?
おかしいだろう? 子供に罪はないのにか?
「ダメだよ、寧々! お前がしっかりしないとダメだろう? なぁ、お前が母親なんだから、ちゃんと子供を守れよ!」
『ダメだよ、私一人じゃ育てられない! 彼も素っ気なくなったし、庵くんのように優しくない。やっぱり私には庵くんしかいないんだよ……ねぇ、庵くん。私達、やり直せないかな?』
そんなの無理だろう。
子供のことを思ったら堕すべきじゃないし、その彼氏と結婚するべきだ。
都合のいい時だけ俺を頼られても無理である。
「お前さ……散々浮気した挙句、性病になっても病院に行かないで放置してて。その上妊娠しておきながら、今度は俺とヨリを戻したいって? そんな都合のいい展開になるわけがないだろう⁉︎」
沸々と溜まっていた怒りが爆発した。
そもそもコイツの浮気性は病気だ。きっと以前から色んな男と関係を持っていたに違いない。
「俺は絶対にヨリを戻さない! 仮にその男と別れることになっても、二度と俺に連絡するな!」
『そんなの無理だよ! もう堕すから、やり直そうよ? ねぇ?』
ただただ歯痒かった。
俺は結婚したくて婚活パーティーに参加したのに、こんな遊んでばかりの浮気女や寝取り男に子供ができて……。
これが俺の子なら、どんなに大事にするだろう。たとえ一人で育てることになっても、全力で育て上げるのに。
神様は何て理不尽なことをするのだろうと、何度も何度も嘆いた。
それから彼女がどうなったかは分からない。
だが、あそこまで修羅場になった相手と上手く行ったとは思えない。
仮に行ったとしても、寧々の浮気性は病気だ。苦労するのが目に見えている。
ちなみに俺は職場の上司の紹介で、可愛い奥さんを娶ることとなった。
とても可愛いのに浮気なんてしない誠実で優しい子だ。
今でも寧々のことはたまに思い出すのだが、心の底からこう思う。
「アイツが運命の相手じゃなくて良かった……」
そして俺は、愛する息子を抱き上げながら妻と共に公園を散歩を始めた。
end……★