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第5話 おい、糞女! ふざけんなぁ!

 だが、綺麗に別れたと思っていた俺達だが、予想に反して寧々から電話が掛かってきて大変だった。


 確かに思わぬ妊娠で不安かもしれないが、これは彼女が選んだ結果なのだ。

 受け入れるしかないだろうと説得しようと思っていた時だった。


『庵くん、助けて……。私、向こうの親に反対されてて……こんな妊娠認めないから堕ろせって言われたの』


「——え?」


 堕ろせって、何を言っているんだ?

 おかしいだろう? 子供に罪はないのにか?


「ダメだよ、寧々! お前がしっかりしないとダメだろう? なぁ、お前が母親なんだから、ちゃんと子供を守れよ!」

『ダメだよ、私一人じゃ育てられない! 彼も素っ気なくなったし、庵くんのように優しくない。やっぱり私には庵くんしかいないんだよ……ねぇ、庵くん。私達、やり直せないかな?』


 そんなの無理だろう。

 子供のことを思ったら堕すべきじゃないし、その彼氏と結婚するべきだ。


 都合のいい時だけ俺を頼られても無理である。


「お前さ……散々浮気した挙句、性病になっても病院に行かないで放置してて。その上妊娠しておきながら、今度は俺とヨリを戻したいって? そんな都合のいい展開になるわけがないだろう⁉︎」


 沸々と溜まっていた怒りが爆発した。

 そもそもコイツの浮気性は病気だ。きっと以前から色んな男と関係を持っていたに違いない。


「俺は絶対にヨリを戻さない! 仮にその男と別れることになっても、二度と俺に連絡するな!」

『そんなの無理だよ! もう堕すから、やり直そうよ? ねぇ?』


 ただただ歯痒かった。

 俺は結婚したくて婚活パーティーに参加したのに、こんな遊んでばかりの浮気女や寝取り男に子供ができて……。


 これが俺の子なら、どんなに大事にするだろう。たとえ一人で育てることになっても、全力で育て上げるのに。


 神様は何て理不尽なことをするのだろうと、何度も何度も嘆いた。



 それから彼女がどうなったかは分からない。

 だが、あそこまで修羅場になった相手と上手く行ったとは思えない。

 仮に行ったとしても、寧々の浮気性は病気だ。苦労するのが目に見えている。


 ちなみに俺は職場の上司の紹介で、可愛い奥さんを娶ることとなった。


 とても可愛いのに浮気なんてしない誠実で優しい子だ。


 今でも寧々のことはたまに思い出すのだが、心の底からこう思う。



「アイツが運命の相手じゃなくて良かった……」



 そして俺は、愛する息子を抱き上げながら妻と共に公園を散歩を始めた。



 end……★




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