無人島にはヴァルザークの欠片の一部が落ちただけで、簡易ハウスは無傷だった。レクトが操縦するゼルクが、皆の元へと降りてゆく。

「よくやってくれた、サリア、レクト。――それにしても、エリオンを疑ってしまった私たちは、本当に酷いことをしたね……」

「で、でも、裏切るつもりじゃなかったら、教えてくれてもよかったのに……」

「今となったら分かるだろう、リオ。エリオンはこれを実行すると、命はないものと思っていたのさ。「行くな！」と、止められると思ったんだろうね、私たちに」

「エ、エリオンさん……」

　リオは下を向くと、ポタポタと涙を落とした。隣りにいるアレンとレクトも泣いている。

「今は泣いている場合じゃないよ。とにかく、ここを離れないと。いつ地球人が来てもおかしくないタイミングだ」

　ミレルが言ったそばから、ヘリの音が遠方から聞こえてきた。時刻は朝の４時過ぎ。もうしばらくで日が昇る。

「し、仕方ない！　レクトの上にリオ！　サリアの上にミレル先生が座ってください！　背に腹は代えられない！」

　アレンの言う通り、３人乗りのゼルクに無理やり５人で乗り込んだ。

「に、兄さん、首がへし折れそうです……」

「小さい私でもこれだけキツイんだ……さぞかし、リオは大変だろうね……」

「しばらくの辛抱です！！　飛びますよ！！」

　アレンが操るゼルクは、日の出の方向へと向かった。

＊＊＊

「アレン！　ハルキと連絡が取れた！　今から言う場所に行ってくれ、トラックで待ってくれている！」

　私はギリギリのスペースでスマートフォンを操作し、アレンに場所を伝えた。以前ハルキと行った川の近くだ。まだ辺りは薄暗い、誰にも見つからなければいいが。

　指定されている場所に着くと、すでにハルキはトラックを降りて待っていた。

「な、なんだよ、無理したら５人乗れるのかよ、この戦闘機」

「い、いや、ハルキさん、これに５人乗るのは絶対におすすめしませんよ……」

　リオは「イテテ」と、首を押さえながら言った。

「ハハハ、そうか。何より、皆無事で良かった。――あれ？　あの耳の尖った、エリオンさんっていう人は？」

　誰が言うのかと、私たちは互いを見合った。結局、ハルキと視線が合った私が言うことになった。

「エリオンは……私たちを守るために、犠牲になったんだ……ま、また後で詳しく話すよ……」

　皆の雰囲気で、それ以上は聞けないと思ったのだろう。ハルキは「分かった」と頷いた。

「じゃ、前の座席にはサリアとミレルさん。念の為、上からこれを着ておいてくれ。男子チームは、荷台のシートの中に隠れておいてくれるか。ちょっとの辛抱だ」

　ミレルと私には、薄手のコートを渡してくれた。特徴的なヴェルミラの服を隠そうとしてくれたのだろう。この気の利く感じは、ミツキのアイデアだと思う。

「最後にサリア。ゼルクの消去を頼む」

「いいのか、アレン。私たちの移動手段がなくなっちゃうけど」

「ゼルクは大気圏外では飛ばせないし、見つかるとやっかいなことになる。綺麗さっぱり消してくれ」

　私がゼルクを消し去ると、ハルキは自宅へとトラックを走らせた。