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ザイル中将

 突如、窓の外が昼間のように明るくなった。


「な、なんだ、この光と音は!!」


 光とともに、簡易ハウスを震わせるほどの重低音が鳴り響いた。玄関へ走るレクトに続き、私たちも後を追った。


 そして、玄関を開けた先の上空で待っていたのは、燦々と輝く1隻のヴァルザーク艦だった。


「ハハハハ……ドレイクの言った通りだな。こんなところに隠れていたのか。全員揃ってくれているとは都合が良い」


 ザイル中将の声だ。ロウゲンの時とは違い、ヴェルミラの言葉で話している。地球への宣戦布告など不要という意味なのだろう。


「や、やっぱり裏切ったのか、エリオンさんは……」


「いや、裏切ったのじゃなく、想定通りなのかもしれないよ。彼が描いたシナリオのね……」


「そこに、エリオ……ドレイク大佐はいないのか!?」


 アレンが夜空に向かって大声で叫ぶ。


「フンッ、一兵卒ごときが偉そうに。ドレイクは3号艦に乗船している。しばらくで、2号艦とともに世界各地を爆撃し始める予定だ」


「だっ、誰か! ゼルクを飛ばしてくれ! 私がイレイズで消し去る!!」


 アレンとレクトがゼルクに向かって走り出した瞬間、ヴァルザーク艦からルクスが一斉掃射された。


「も、戻っておいで!!」


 瞬時にミレルがアブソルヴェールを張ると、間一髪、アレンたちはアブソルヴェールの中に避難することが出来た。


「お前たちに何が出来るかくらい、話は聞いている。まさか、こんな僻地でエルシア人と一戦交えることになるとはな。ハハハ、私たちの腐れ縁は相当なものだ」


「私たちをここまで追い込むのは何故だ!? その船が3隻もあれば、地球征服なんて容易いだろう!!」


「ああ……お前がイレイズを使う女か。私はエルシア人が何より嫌いでな。全世界を灰にしても、お前たちがどこかで生き残っていると考えると、気持ち悪くて仕方がないんだよ。ここで持久戦に持ち込めば、お前たちに勝ち目はない。降伏なんてさせるつもりはないぞ、死体になるまでじっと見届けてやる」


 ザイル中将は慎重かつ聡明な男……? エリオンが言っていたことは嘘ばかりだったって事なのか……


「……私にひとつ、考えがある」


「な、なんです、先生!?」


「私がアブソルヴェールを張りながら、ゼルクに乗る。一緒に乗るのは操縦がかりのアレンと、イレイズを撃つためのサリアだ。レクトは、リオと2人で入れるシェルターをジェネヴィオンで生成するんだ。私たちが攻撃している間、そこでじっと耐えて欲しい。――どうだレクト、やれそうか?」


「あ、当たり前だ!! もう、それしか残ってないんだろっ!!」


「よし、では10秒後にスタートするよ。10、9、8――」


 ミレルが8まで数えたところで、ヴァルザーク艦内が騒がしくなった。


「ザ、ザイル中将! 2号艦からSOS発信です!! あっ、2号艦消滅しました!! 原因は不明っ!!」


「なっ、なにっ!? どういうことだ!!」


 ザイルが叫んだ次の瞬間、ヴァルザーク艦の真上に、新たなヴァルザーク艦が突如として現れた。

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