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エリオン

「いま、ノクシアを呼び寄せた。直に到着するはずだ。その前にサリア、レヴァナントの残骸を出来るだけ消しておいてくれないか」


 アレンは私に向かってそう言った。確かに、残骸を調べられると面倒なことになるかもしれない。まあ、残骸があろうとなかろうと、地球外のものだと断定されるだろうが。


 しばらくすると、ノクシアがヘリたちの間をすり抜け、私たちの側へと降りてきた。


「では、ノクシアはレクトの操縦で私とリオ、ゼルクはサリアの操縦でアレンとミレルさんに別れよう。集合場所は私からゼルクへ送っておく。くれぐれも、地球のヘリに見つからないよう気をつけてくれ。では、私たちから先に出発する。――すまないな、レクト。完治には程遠いってのに」


「ノクシアの操縦くらい出来るよ、エリオンさん。それより、リオを看といてもらわないと困るからね。――じゃ、後で落ち合おうサリア!」


 レクトたちのノクシアは急浮上すると、南西の方向へと飛んでいった。ヘリは追うような仕草を見せたが、性能的に追いつけるものではなかった。


「じゃ、私たちも行こうかサリア。お前もかなり疲れているだろうが、最後の一踏ん張りだ。頑張っておくれ」


 ミレルと私でアレンを両側から支え、ゼルクへと乗り込んだ。ミレルが言ったように、ハルキたちと別れた後、急激に疲れが襲ってきていた。戦闘に次ぐ戦闘で、疲れに気づく暇もなかったのだろう。


 私たちのゼルクも急浮上すると、南西へと進路を取った。



***



「ここまで来ると、エリオンさんから送られてくる場所まで、自動で飛んでくれるはずだ。お疲れだったサリア、お前も少し安め」


 深く座席に掛けたアレンが言う。隣のミレルはアレンにソルフィスを当て続けている。


「先生は大丈夫? アブソルヴェールにソルフィスと、ずっと量術を使い続けているけど」


「アレンもかなり良くなってきたからね。もうしばらくで終わるよ」


「すみません、守ってもらってばかりで……それより、先生。エリオンさんは……ヴァルムートの人間なのですか? それとも、エルシア人なのですか?」


「ハハハ、どちらだと思う?」


 ミレルとは知り合いだったこと、エルシア特有のなまりがあることを考えると、エルシア人だと思う。だが、風貌は完全にヴァルムート人のものだ。


「もしかして……整形をしたエルシア人ですか?」


「そのとおりだ、アレン。エリオンはエルシア人のプライドを捨ててまで、鼻と耳を尖らせ、ヴァルムート人を装ったそうだ。整形をした理由は、いつかエルシア人として復讐を果たしたいと言っていた。先程の戦闘中に聞いた話だから、今のエリオンに関して知っているのはこれくらいだけどね」


「そうだったのか……ドレイク大佐のときには、エルシアの訛は全く分からなかった……徹底していたんだな」


「もしエリオンがレヴァナントに乗っていなかったら、私たちは全滅していただろうね。サリアたち3人が地球に送られたこと、サリアたちへの連絡役がアレンだったこと、そして私も地球にやってきたこと。全てが運命だったんだよ」


 運命か……


 不思議と、最近よく使う言葉だ。ゼルクは機械音を発すると、自動で降下を始めた。どうやら、どこかの無人島に着陸するようだ。

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