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逃走

 私と同じように、敵もルクスを乱射してくる。だが、ルクスさえ消し去ってしまうイレイズの前では、ゼルクになすすべは無かった。


「エリオンさん、ゼルクは全部消し去った! 後はどうすればいい!?」


「よくやった! 私が乗ってきたゼルクに乗れるか? レヴァナントにイレイズを放って欲しい! 一部を削るだけで落ちる可能性は高い!」


 ヴェルミラの兵器は手順を踏むだけで、操縦方法が簡単にインストールされる。実機に乗ったことはないが、きっと大丈夫だろう。


「操縦は大丈夫だと思う! た、ただ、操縦しながら上手くイレイズを放てるかどうか……」


 アレンとリオ、そしてレクトは立ち上がることが出来ず、エリオンはリオたちの治療で手が離せない。


 その時、上空で爆発音が起きた。


 見上げると、レヴァナントが対空レーザーで、レクトが生成した壁を破壊しているところだった。レーザーを撃てるくらいの量術を、やっと充填出来たのだろう。


 崩れた壁の破片が、ガラガラと私たちの元へと落ちてくる。ミレルはソルフィスを解き、アブソルヴェールを発動させた。アレスレイ対地上レーザーでさえ守りきったアブソルヴェールだったが、落下してきた壁の破片でさえ緑の壁が振動するようになっていた。ミレルも体力の限界が近いのだろう。


「み、見て、サリアちゃん! あんなに沢山……」


 壁がなくなり現れたのは、満点の星空と多数のヘリコプターだった。軍用ヘリに混じり、報道用のヘリコプターもいるのかもしれない。壁の中から現れた巨大空母に驚いたのか、蜘蛛の子を散らすようにヘリコプターたちは距離を取った。


「レヴァナントは逃げる気だ……遅れてくるヴァルザーク艦と合流するつもりだろう。そうなったら、手遅れになるかもしれない……し、仕方ない。ミレルさん、少しの間だけリオを――」


「――お、俺は無理だよな、エリオンさん。その、ゼルクってのを操縦するのって……」


「お、お兄ちゃん!?」


 ハルキの突然の提案に、ミツキが声を上げた。


「い、いや、ゼルクは操縦法をインストールしてくれるから、すぐに操縦は出来る。だが、大丈夫なのか……? 死ぬかもしれないぞ」


「このまま何もしないで、死ぬよりよっぽどマシだ……そもそも、地球が攻められてるんだ、本当は俺たちがなんとかしないといけない。――行けるか、サリア?」


 初めてハルキが私を呼び捨てた。どうしてだろう、少しだけ嬉しく感じたのは。私はハルキの手を引くと、ゼルクの操縦席に乗り込んだ。


「ここだ。このスクリーンに手のひらを乗せて。しばらくで操縦方法が頭に入ってくると思う」


 ハルキは言う通り手を乗せたが、難しい顔でスクリーンに乗せた手を見つめている。もしかして、地球人にはインストール出来ないのか……


「は、入ってきた! わ、分かるぞ操縦方法が! 行くぞ、サリア!!」


 ハルキは操縦桿を引くと、ゼルクは勢いよく宙に舞い上がった。

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