「ただいまー、帰ったぞリオ」
レクトと一緒にリビングに入ると、リオはグッタリと床に倒れ込んでいた。
「お、おい大丈夫か、リオ!」
「――あ、ああ……大丈夫。お腹へって動けないだけ」
「なんだ、心配させんなよ。お前の体は地球に合わないのかと心配したじゃないか。――ほれ、お土産」
「なっ、何? この良い匂い!?」
さっきまでのグッタリは何処へやら、リオはガバっと起き上がった。カレーの美味しさに感動した私たちは、ハルキに頼んで弁当屋に寄ってもらったのだ。
「まあ、食べてみろって。――飛ぶぞ」
私たちより空腹が長かったからか、リオはレクト以上の勢いで、カレーを食べた。
私たち3人は初めての地球食、カレーライスの虜となった。
***
時は過ぎ、夕方の4時。
2時間後の6時から、ハルキのおごりで焼肉に行くことになっている。私たちはリビングで時間を潰していた。
「ちょっと冷えるな。リオ、少し温めてくれよ」
「――言われてみれば少し冷えますね。地球の服って、個性的で面白いけど機能性は皆無ですね」
リオはそう言うと、クライメアを唱えた。一瞬で周りの空気が暖かくなる。リオの量術クライメアは、周囲の温度を自在に変えることが出来る。ただし、凍らせたり燃やしたりする程の力はない。
「――こないだ『ハッタリ量術』なんて言われて怒ったけどさ……実際のところお前のクライメアとか、サリアのイレイズは実用性あるもんな。確かに、俺の量術がハッタリって言われても仕方ない気がするよ」
「あっ、気にしていたんですねレクトくん……ぶっちぎりで最下位だなんて言われて、僕もついムキになってしまって……あの時はごめんなさい……」
レクトは「いやいや、俺が悪かったんだよ」と笑っている。
私たちヴェルミラ人の7割が量術を使えるが、基本的には1人につき1つの量術しか使えない。複数の量術を使える者もいるにはいるが、ごくごく一部の者だけだ。ちなみに、日本語インストールなどの量術は宇宙船セレスタが行ったもので、私たちの力ではない。
「でも今日はレクトのイメイジョンも役に立ったじゃん。もしかして、地球では実用性のある使い方が出来るかもよ」
「――だといいな。俺たち、少なくとも3カ月はこっちでお金稼がないといけないしな。イメイジョンが仕事に転用できないか考えてみるか」
「その点、僕のクライメアは微妙ですね。ほぼ、冷暖房くらいの使い方しか出来ないし……」
「何いってんの。こんな風に使えば、光熱費も抑えられるじゃん」
私が言うと「確かにそうだ!」とレクトは笑った。