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不用品の行方

「ごちそうさま……やっぱ、故郷の飯は何か落ち着くな。――っていうか、地球の飯はまだ食ったことないけど」


「それよりさ、明日からのご飯はどうすんの? お金はあるんだよね?」


 その辺りはすべてリオが管理している。リオは袋からゴソゴソと何かを取り出した。


「これがマイナンバーカード、これがスマートフォン、そして現金はとりあえず2万円ずつ渡しておきましょうか。これで、残りの現金は14万円です」


 あらかじめ色々とインストールされていたおかげで、マイナンバーカードもスマートフォンも何なのかわかる。それよりも、未だにこんな紙切れで買い物をしているのか、地球人は。


「残りの12万円って結構な額なのか? もちろん、俺たちは期限が来るまでその金でやりくり出来るんだよな?」


「それがですね……この家の家賃が5万円、それプラス食費や光熱費なんかも必須でかかりますからね……あっという間に無くなってしまうと思いますよ……」


「はあ!? なんだそれ! 家賃がめちゃくちゃ高いのか!?」


「いえ、全然良心的な値段だと思います……本部のミスなのか、はたまた僕たちへの嫌がらせなのか……」


 マイナンバーカードの偽造や賃貸契約などは、一ヶ月前に先行していた無人の宇宙船が量術によって行ったものだ。とりあえず、嫌がらせではないことを願う。


「なんてこった……俺たちは、こっちでも金を稼がなきゃいけないのかよ……」


 私たち3人は、ため息とともにテーブルに突っ伏した。



***



「ちょ、ちょっと……不用品はどこにいっちゃったの……?」


 翌朝、ミツキが家にやってきて、リビングをグルグルと見回した。


「も、もしかして、捨ててはいけない物があったりしましたか?」


「い、いや、そうじゃなくて。大きな壺とか、どこにいっちゃったのかなって? あれを処分するなんて、かなり大変なことだと思うんだけど……」


 あ……


 これは地味にヤバいことをしてしまったのかもしれない。あれだけの物量が半日で消えてしまうなんて、普通なら不可能だ。


「そ、それはアレだ、ミツキさん! 俺たちの友達が引っ越し祝いだって、トラックで引き上げてくれたんだよ! しかも夜中に! なっ、リオ!」


「そ、そうなんです! 夜中だから音も光も出さず、静かに静かにやったんですよ!」


「――ふーん、そうなんだ。良いお友達さんね」


 ミツキは首を傾げながら言った。


「――あとね、凄く失礼なこと聞いちゃうんだけど、みんな服はそれしか持ってないとかって……あったりする?」


「ああ、服はこれだけだよ。俺たちはこれが普通――」


「そっ、そうなんです! 引っ越しの荷物を究極に減らしたら、こんな感じになってしまって! こっちで新しいの買わないとなって! ハハハ!」


 レクトの言葉を遮ってリオが言った。確かにミツキは、昨日とは違う服を着ている。


「もしね、もし迷惑じゃなければの話なんだけど……兄の服と、私の着てない服があるんだけど、それ持ってこようか? ほら、引っ越しって色々とお金かかっちゃうから、節約できるところは節約したらいいのかなって」


 断ろうと前に出た私を押しのけて、レクトとリオは大声で「お願いします!」と言った。

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