「この鉄の棒切れ1つで、この家を施錠してるのか……恐ろしく低レベルなセキュリティだな……」
レクトは鍵穴にガチャりと鍵を差し込み、そう言った。
「まさかだけどさ、この家に3人全員で住むわけじゃないよね?」
「い、いや、それが……サリアさんの言う通り、僕たち全員の家だそうで……」
「はあっ!?」
レクトと私はリオを睨みつけた。
「ちょ、ちょっと、僕に怒らないでくださいよ! 僕だって知ったのは地球に着いてからだし、同じように驚いてるんですから!」
それもそうだ、リオに文句を言っても仕方がない。レクトはため息をつきつつ、ガラガラと引き戸を開けた。
「……あー。外観同様、中もくたびれてるな」
「本当ですね……しかも何ですか、この大きな壺とか。この家、不用品だらけかもしれませんね」
「じゃ、まずは3人で不用品選びから始めるか。まず、このデカい壺は要らないな。 ――よろしくサリア」
まあ、そうなるか。
私は右手をかざしてイレイズを唱え、大きな壺を消去した。
「おお、流石。――そのイレイズで量術や
「フンッ、うるさい。で、次はどれを消したらいい?」
私は家の中の不用品を、片っ端から消し去った。
***
「――よし、これで大方片付いたか。不用品は多かったけど、買わなくて済んだものも多くて助かったな。――で、次は誰がどの部屋を使うかだ。どうだ? 希望の部屋はあったか?」
レクトの問いに、私とリオは頷いた。
1階にはリビングキッチンの奥に1部屋、2階にはベランダ側に1部屋、奥にある1部屋で合計3部屋がある。
「じゃあ、せーので言うぞ! ――せーのっ!」
「俺は1階!」「僕はベランダ付きの部屋!」「私は2階の奥!」
まさかの、一度で全員が希望通りの部屋を選ぶことが出来た。
「サ、サリアさん……そっちの部屋、広くないけど大丈夫ですか?」
「窓を開けるとね、小さな畑が見えるんだ。道路が目の前の部屋より、私はこっちがいい」
「畑か……ヴェルミラで畑を見る機会なんて、ほとんど無いからな。まあ、すんなり部屋割りが決まって――」
その時、『ぐぅ』っとレクトの腹の虫が鳴いた。
「ハハハ、すまんすまん。腹減ったし、とりあえず飯にでもするか」
私たちはセレスタから持ってきた食事をテーブルに広げた。
そういえば、セレスタから持ってきた食事はこれで最後だ。明日からは、何を食べようか。