「400年後にヴェルミラが消滅するなんて……未だに僕は信じられませんよ」
宇宙船から、母星ヴェルミラを見下ろしリオが言う。青々とした海を湛えるこの星は、今もヴェルミラの人々が住んでいる。リオの言う通り、数百年で消滅してしまう星にはとても見えない。
「しかしまあ、やっとの思いでヴェルミラ
「そんな言い方はやめてください、レクトくん……僕たちの任務は惑星調査です。ワ・ク・セ・イ・チョ・ウ・サ」
「――まあ、合格者の下から3人には、お似合いの任務ってことなんだろうけどさ」
「まあまあ。他の合格者たちと違って、僕たちは攻撃力皆無なんですから。調査の任務を与えられただけでも良しとしましょうよ」
ぼやくレクトに、リオはそう言って笑った。
私、サリアを含めた3人は今、セレスタという宇宙船に乗っている。目的はヴェルミラの代わりになる星の調査に出るためだ。
「で? その地球ってのは、俺たちこのままの姿で問題ないのか?」
「ちょ、ちょっと、レクトくん……渡された資料に目を通してないんですか? 信じられないんですど……」
リオはそう言うと、ため息を一つついてから地球の説明を始めた。
「ヴェルミラと地球の大きさはほぼ同じ。公転にこそ少しの差がありますが、自転に関してはほぼ同じだそうです。さらに驚いたことに、大気成分も99.9%同じなんです。そのせいもあってか、地球人の見た目は僕たちとほとんど変わらないんですよ」
モニタに映し出された地球人の映像を見て、レクトと私は「おお!」と声を上げた。
「ま、まさか、サリアさんも資料に目を通してなかったんですか……? 先が思いやられます……あと、映像を見ても分かるように、男女の違いもヴェルミラ人と変わりありません。あとは言語だけ『
量術とは、量子を操ることで空間や物体、そして生物に影響・変化を与えることをいう。インストールする地球の言語でいうと、魔法や魔術というものが近いかもしれない。ヴェルミラ人のほとんどは、この量術というものを使うことが出来る。
「そうは言うけどさ、リオ。直前に決まった任務だし、資料をもらったのなんて昨夜だよ? リオくらいマメじゃないと目なんて通さないよ」
「そうだよな、サリア。――にしても、普通ってこんな急に任務が決まるものなのか? 俺たち以外の準備はとっくに済んでたみたいだし」
レクトの言う通りだ。地球では様々な手配がすでに済んでおり、私たちの家まで用意されているという話だ。
「そこは少し引っかかりますよね……秘密裏に進めていた任務だからってことなんでしょうけど……」
会話が止むと、『ピルルル……ピルルル……』という、セレスタの機械音が静かに響いた。
「――まあ、初任務が幼馴染の3人で良かったよ。量術の点数が、ぶっちぎりの最下位だったリオも一緒に来れたことだし」
「そ、そこで……試験の結果出してくる必要ありますか……? ――言っておきますが、僕の量術はレクトくんと違ってハッタリなんかじゃありませんからね」
「なっ、なんだと! 俺の量術のどこがハッタリなんだ! お前、言っていいことと悪いこと……おおっ」
その時、『ズウン――』とセレスタは大きく揺れ、コンピュータがアナウンスを始めた。
『セレスタ号、量術充填完了です。シートベルトを今一度確認してください。しばらくで、地球へ向けてワープを開始します』
「――おっ、おい。なに、クスクス笑ってんだよサリア」
「いや、レクトの量術がハッタリての、上手く言ったなって思って。ハハハ」
レクトは「フンッ」と大きく鼻を鳴らし、ドスンとシートに深くかけた。
まあ、そういう私の量術も褒められたものではないのだが。
そんな事はさておき、いよいよ私たちの初任務の始まりだ。
地球――
一体、どんな星なのだろうか……