「私はいつの日かは普通の少女でした。」
シロネさんは語った。純白で美しく、まるで花のように麗しい様に見えた。
「私は普通の人間と同じ、真っ当な少女でした。特に変わったこともない、平穏な日々が続きました。私には父親がいて、母親とは離婚しているため、男手一つで私を育ててくれました。父親はアンドロイドを作る仕事に携わっていて、いつも未来の話をしてくれました。『私のこの研究はいずれ役に立つ時が、来る。人々の暮らしを豊かにするのも同時に、アンドロイドと言う新たな種族が生まれることでもある。お前は、どんなモノにでも優しい子であれ。人にも、動物にも、植物にも、モノにも。平等に愛すのだ。』私は父が好きでした。色々なところに行き、楽しい思い出を記憶しました。そして、優しさを学んだのです。しかし、私が15歳の時。学校帰りにトラックに轢かれて、私は意識不明の昏睡状態に陥り、植物人間になりました。父は医師からこう告げられました。『残念ですが。もう、この子は助からない』と。父は絶望しました。膝から崩れ落ちてだそうです。当たり前ですよね。若くして娘を失った痛みは計り知れないでしょう。そうして、私の短い人生は既に終わっているのです。植物人間になりました。身体だけは昨日していますが脳が死んでいる。ただただ、植物のようにそこに佇んでいたのです。父親は荒れました。父と同じ職場で働いて居た研究員によると、アルコールに溺れ泣く毎日だったらしいです。しかし、1年ほど経過した時、私の父は私の記憶メモリーを保存し、そこから私の記憶、DNA、クローン媒体を取り、いつしか私はアンドロイドとして意識を手に入れていました。しかし、目覚めた時父はその場に居ませんでした。私の研究の途中で体調を崩して亡くなったそうです。私は父の遺言を見ました。『残念だが、これを見ているって事は私はこの世界にいない。だが、私はいずれ蘇る。しかし、素材の調達に苦労しているようで、早くてもあと30年はかかる。シロネ、お前は強い子だ。まず、学校で親友を作りなさい。そして、人間らしく生き人に優しくしなさい。最後に、人生を楽しみなさい。』そう、震える文字で書かれていました。そして、私は父の言葉をうけ二度目の人生を謳歌しています。そして、学校に復帰した頃にはもう高校生でした。しかし、ポッカリ空いてしまった一年間は痛く、私は周囲の子と馴染めずにいました。そんな時、彼女が現れました。『ふっはっはっはー!暗い顔をするな少女よ!!』と。私はびっくりしました。彼女の風貌は一見変わっていましたが、私と友達で居てくれたのです。そして、今に至ります。大塚さんとも出会い璃くんとも出会えました。」
「そして、私は今ここにいます。存在しています。生きています。」
「......すまない。安易に質問して」
「璃さん。知ってますか?人間はいつか老けてしわくちゃになりますけど、アンドロイドは歳を取らないんですよ!!」
シロネさんはハニカミながら笑っている。とてもアンドロイドとは思えない。やはり、シロネさんは人間と言っても遜色がない。もはやそれは人間そのものであり、温かみを感じる。
夢見るアンドロイド少女......可憐だ。
そして、橋田。お前、ちゃんとリーダーしてるよ。
そんな時、基地のドアが勢いよく開いた。
「同志諸君!!帰って来ましたよ!!」
「夏風堂の芋羊羹を買ってきた!!」