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第7話 オペレーションレベル1

 あれから夜も明け、今日という新たな日が始まったのだ。さあ、起きてみればなんのことない日常のまま、俺は決まり切ったルーティーンに従いながら学校にへと足を運ぶ。そして、わりかし無難な時間に学校に着き、俺は教室のドアを開けた。

 そこには、沢山クラスメイトの中にやはり異質な存在があった。橋田は今日も元気よく厨二病ライフを満喫中らしい。やたらとカバーが黒すぎる本を真剣な眼差しで見つめていたのだ。

「よお。何見てるんだ?」

 俺は柄にも無く自分から話しかけていた。橋田は、本から俺に目線を変えた。

「ふっふっふっ、助手よ。知りたいですか。ふふふ、良いでしょう。ブラッドファミリーの一員として貴方には特別に教えてあげましょう。」

 朝から元気いっぱいだなコイツは。きっとよく寝たんだろうな。昨日。

「辞書か?」

「違いますね。そんなチャチなモノと一緒にしたら、地獄の閻魔も大笑いですよ。」

 どういう意味だ。

「なると、この書物は、〈禁制魔導書〉と言って魔術に関する事が書いてある書物です。ヨハネの黙示録的な凄い本なのですよ。」 

「魔術か......なあ。そういえば昨日のあの召喚の儀。アレは何処で習得したものなんだ?」

 橋田はニコニコな笑顔のまま嬉しげに話す。

「言ったでしょう。アレは自然にできた事なんですよ。」

「じゃあもしかして、この書に書かれているような魔術も使えるって事か?」

「まあ、全てとは言いませんが、簡単なものなら一般ピーポーでも出来なくは無いです。まあ、ピンと来てなさそうですし、私がお手本を見せてあげましょう」

「例えば、このペンがありますよね。」

 そう言うと橋田は俺のペンを手に取る。

「ああ。」

「コレをこうすると......」

 橋田はペンを小さな掌に置いた。すると小さな紋章が掌に現れ、少量の煙を出し始めた。そして、多少の時間が経った頃だった。

「おお、これは.....」

 よく見てみると、ペンだったもの万年筆に変わっている。やはりホンモノのようだ。

「ふっふっふっ、コレは掌に乗せたものを好きな物と交換できるという魔術です。」

「おお、すごい。この能力があれば、儲かるんじゃないのか?」

「ただ欠陥がありましてね。掌になるもので無いと頼めないのです。あと、現金も出てきません。」

 万年筆を売ればかなりの金儲けになると思うがな。



 ただボーッと過ごしているうちにまた放課後へとなり、このなんてことないチャイムですら、まるで始まりを告げる鐘のように感じる。いつもは終わりを告げるはずだったチャイムは新たな始まりを告げる音にへと変わっていた。

 昨日と同じように、俺は橋田と共に学校を颯爽と去っていった。周りからの変な奴らを見るような視線は言うまでもないだろう。まるで運動会のペア競技のように。

 そして、長い長い商店街を歩いて無事我らの基地へと到着した。

 橋田はドアをバンと開け、ズカズカと中に入って行く。

 中を除けばシロネさんが優雅に紅茶を飲んでいる。うんうん。やはりシロネさんはこのヘンテコ厨二病チームの唯一のまともな人であり、華となり得るのだ。しかし、そこには昨日居た、バカの大塚の痕跡がなかった。

「おはようございます。橋田さん、璃さん。」

 シロネさんは天使のような朗らかな笑顔で手を振っていた。俺もニヤニヤしながら手を振りかえしてた。何故か橋田に軽く睨まれた気がする。

「あれ、シロネ。大塚はまだ来てない?」

 橋田が不思議そうに辺りをキョロキョロしながら尋ねる。シロネさんは持っていたお茶を机に置いて答えた。

「はい、まだ来ておりません。それに、今日一度も連絡ついていません。」

「おかしいな、明菜は確かにバカではあるけど遅刻はしない奴なんだがな。」

「そもそも今日は何時集合なんだ?」

「4時です。」

 颯爽と言うが俺たちは全然遅刻している。何故なら俺たちが到着したのは4時を超えたら4時10分だからだ。

「細かい事は気にしないが得ですよ!!」

 そんなので良いのか。一応お前は団長、リーダー的な存在だろう。

 ってまてよ。そもそも俺たちの学校が終わるのが大体3時50分だろう?そこから、寄り道無しで全力で走って、4時10分に着いたよな。えっと、シロネさんはどうやってここまで来ているのだろうか?あまり徒競走が得意そうにも見えないし、バイクでも持っているのであろうか。まあ、いいや。

「それにしても心配です、ちょっと電話してみます。」

 橋田がスマホを取り出して電話をかける。何コールかしたのち、しまいには大塚が電話に応じることは無かった。

「あれ、出ないですね。」

「何かあったのか?」

「おかしいですね。割と音には敏感なタイプなんですがね」

 野生か。

「うー、ぷいぷいぷいぷい。助手ー、どうしよぉ?」

 橋田とシロネさんは大塚が来ないことに焦りを感じているようだ。どうやら橋田は焦り出すと、ぷいぷい言う癖があるらしい。

 ああ、面倒ごとに巻き込まれるのは勘弁だが、それでも問題を放置する事も出来ない。

「なんかあったんかもな。じゃあ、俺たちで近隣を探してみよう。」

「ええ、我らで大塚を探しますよ。オペレーションレベル1。模索ミッション開始!!」

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