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おきて!

「おきて!お〜き〜て!」

ゆさゆさと身体を揺さぶられている。

朝の日差しが眩しく室内を照らしていて、既にもう日は昇って久しいらしい。

「んだよ……どうせ早起きしたって仕事なんて……」

寝ぼけた頭で考える。

そもそも、俺を起こすやつなんていなかったはず……。

「はっ!」

がばりと布団から跳ね起きる。

「な、何時だ!」

近くに時計があった。それはもう既に午前10時を示していた。

途端に血の気が引く。

「ララァ!仕事は何時からだぁ!?」

「8時だよぉ……」

既に半分泣きべそをかいていたララが答える。

「ま……まずいまずいまずい……」

初日から遅刻。それもメリアさんのような厳格な方がそんなことを許すはずがない。

「あたし……なんかいもおこしたのに……」

「な、泣くのはあとにするんだ! 悪かったけど! ほんとに俺が悪かったけど!!」

すぐにパジャマを脱ぎ捨て、昨晩用意してあった制服に着替える。

「身だしなみに気を使ってる暇は無さそうだな……」

ひとまず寝癖だけはないように髪を整える。

「よっし、いくぞララ!」

「おこしたのにぃ……」

未だにしょぼしょぼしているララを抱えて家を出る。

「うおおぉぉぉおお!間に合ええぇぇぇええ!」

「むりだよぉ……」

既に定時は過ぎているので間に合うはずはないのだがとにかく急いだ。



そして俺が転生管理局に着いた時はもう11時になっていた。

「おはようございます!」

「…………」

着いてそうそうに局長室に飛び込みメリアさんに挨拶する。

しかし彼女は俺に挨拶を返さず目を閉じている。

居眠りしているわけではないらしいのは眉間のシワが物語っている。

「……あなたのいた世界では、それが昼時の挨拶だったのかしら?」

「い、いや……」

地響きが聞こえてきそうなほどのプレッシャーだが、悪いのは俺だ……覚悟を決めなくては……。

「も、申し訳ありません! 寝坊したのは完全に俺の意識の低さが問題です! どんな罰でも受け入れる所存です!」

必死で謝罪の言葉を述べ深く頭を下げた。

「ごめんなさいぃっ!」

俺に続きララも隣でちっちゃくなって頭を下げている。

「……ふふ。どうしたの一体?」

「え?」

俺が顔を上げるとメリアさんはにこりと笑っていた。

「い、いや。だって初日から……」

「今日は仕事の日じゃないもの」

「は、はぁ?」

俺はじろりとララを睨む。

「え?えと……」

ララは自分でも状況がわかっていない様子だ。

「伝えたわよね?あなたのお仕事がある日は転生者が現れる前後しかないわよ」

「でもやけに眉間にシワを寄せてたから怒ってるのかと……」

「死にたいのかしら……?」

俺のフォローを聞いたメリアさんは先程より余程深いシワを眉間に寄せる。

……どうやら自前だったらしい……。

「あー……じゃあ俺が来たから予定が狂ったんですか?」

「そうとも言えるわね……本来なら転生者が来る前、来た時、転生した後の三回の業務があるの」

「なるほど……じゃあララを責めるわけにもいかないよな」

「そ、そうだよ……」

ララはほっと胸から吐き出すように言う。

「あら、でも予定の確認が取れていなかった、ってことではあるんじゃないかしら?」

「うぐ……」

ぎくりとララが肩を浮かす。

「ま、いいわ。とにかくあなたたちにはまだ仕事がないの。とはいえぶっつけ本番というわけにもいかないでしょうし、シエルくん。あなたは図書館やエトンでも使ってお勉強しなさいな」

「は、はい……」

お勉強、私の嫌いな言葉です……。

「あ、そうだ。今言ってて思ったけどあなたエトン持ってないわよね」

「エトン?」

しれっと流していたけどきいたことのない単語だ。

「これ」

メリアさんが手を出すと何も無い空間からいきなり魔導書のようなものが出てきた。

「うわっ」

「驚いた?魔法のない世界の出身だっていうものね」

「え、ララも使えんの?」

「むり」

即答して首を振る。

「ララにはまだあてがっていないの。ちゃんと字も読めないからね。代わりに転生の決まりを書いた辞典を作って渡したの」

……あれ、メリアさんが書いたのか。

「ありがとうございました」

ララがぺこりと頭を下げる。

「それで、エトンね。これは別に作るのが難しいわけではないからあなたの分も用意するわ」

「ありがとうございます!」

ララに倣い俺もぺこりと頭を下げる。

「じゃ、ちょっと来なさい」

メリアさんが手招きして部屋から出ていく。

「え、今?」

まごつきながらも俺とララはメリアさんの後を追った。

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