夕飯を終えた梢と笑理は、美しい夜景が輝く港沿いの広場を歩いていた。途中、立ち止まって、そよ風を受けながら港を眺めていると、梢は、
「そういえば、今日雑貨店行った時、何買ったの?」
と、尋ねた。すると笑理は紙袋を開け、購入したバラのブレスレットを見せた。
「これ買ったの」
「可愛いじゃん」
「手、出して」
笑理に言われ、梢が手を前に差し出すと、手首にブレスレットをつけられた。
「私に?」
笑理も自分の手首にブレスレットをつけ、
「二つ同じやつ買ったの。お揃いにしたくて」
「笑理……」
アクセサリーをもらった梢は嬉しく、じっとブレスレットを見つめた。
「写真撮ろうよ。最初のデート記念に」
「うん」
笑理がスマホのカメラを自撮り機能にすると、梢は自分もカメラに映るように笑理にべったりと体をくっつけた。幸せそうにカメラに映る梢と笑理は、まさに付き合いたてのカップルそのものであった。
「ねえ、ここでキスしようか」
梢はハッとなった。
「え、ここで?」
「この時間になると、全然人もいないしさ」
梢は辺りを見回した。夕方はカップルが多いこの場所も、夜も九時半を回れば、人影は全く見受けられない。自分たちしかいないことを再度確認すると、
「うん……良いよ」
梢は瞼を閉じると、ゆっくりと顔を近づけてキスをする笑理を受け入れた。夜の気分ということもあるのか、梢はまだ笑理と一緒にいたい気持ちに駆られた。
「そろそろ、帰ろうか」
「笑理……。今日は、まだ笑理と一緒にいたい」
「一緒にいてくれるの?」
「うん」
笑理は一瞬何かを考えると、目の奥から真剣な眼差しとなった。
「あのさ……。私、梢と一緒に行きたいところがあるの」
「行きたいところ?」
「ひろーい!」
梢はダブルベッドにダイブした。笑理が行きたいと言っていた場所は、繁華街の中にあるラブホテルだった。
「真面目な顔するから、どこかと思っちゃったじゃん」
「梢に、ラブホテルに行きたいって言ったら、断られるんじゃないかと思ってさ」
「好きな人と一緒に行くんなら、問題ないでしょ」
梢は仰向けになると、体を大の字に伸ばした。するとその上から笑理が迫ってきた。
「梢。私、我慢できない」
笑理が勢いよくキスをしてきたので、梢は驚いて拒んでしまった。だがそれでも笑理が、梢の両腕を頭上で押さえつけ、自らの足で梢の両足も押さえ、何度も唇を重ねていくことに対して、梢も次第に笑理の積極性を受け入れてしまった。