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その四

夕飯を終えた梢と笑理は、美しい夜景が輝く港沿いの広場を歩いていた。途中、立ち止まって、そよ風を受けながら港を眺めていると、梢は、

「そういえば、今日雑貨店行った時、何買ったの?」

と、尋ねた。すると笑理は紙袋を開け、購入したバラのブレスレットを見せた。

「これ買ったの」

「可愛いじゃん」

「手、出して」

笑理に言われ、梢が手を前に差し出すと、手首にブレスレットをつけられた。

「私に?」

笑理も自分の手首にブレスレットをつけ、

「二つ同じやつ買ったの。お揃いにしたくて」

「笑理……」

アクセサリーをもらった梢は嬉しく、じっとブレスレットを見つめた。

「写真撮ろうよ。最初のデート記念に」

「うん」

笑理がスマホのカメラを自撮り機能にすると、梢は自分もカメラに映るように笑理にべったりと体をくっつけた。幸せそうにカメラに映る梢と笑理は、まさに付き合いたてのカップルそのものであった。

「ねえ、ここでキスしようか」

梢はハッとなった。

「え、ここで?」

「この時間になると、全然人もいないしさ」

梢は辺りを見回した。夕方はカップルが多いこの場所も、夜も九時半を回れば、人影は全く見受けられない。自分たちしかいないことを再度確認すると、

「うん……良いよ」

梢は瞼を閉じると、ゆっくりと顔を近づけてキスをする笑理を受け入れた。夜の気分ということもあるのか、梢はまだ笑理と一緒にいたい気持ちに駆られた。

「そろそろ、帰ろうか」

「笑理……。今日は、まだ笑理と一緒にいたい」

「一緒にいてくれるの?」

「うん」

笑理は一瞬何かを考えると、目の奥から真剣な眼差しとなった。

「あのさ……。私、梢と一緒に行きたいところがあるの」

「行きたいところ?」


「ひろーい!」

梢はダブルベッドにダイブした。笑理が行きたいと言っていた場所は、繁華街の中にあるラブホテルだった。

「真面目な顔するから、どこかと思っちゃったじゃん」

「梢に、ラブホテルに行きたいって言ったら、断られるんじゃないかと思ってさ」

「好きな人と一緒に行くんなら、問題ないでしょ」

梢は仰向けになると、体を大の字に伸ばした。するとその上から笑理が迫ってきた。

「梢。私、我慢できない」

笑理が勢いよくキスをしてきたので、梢は驚いて拒んでしまった。だがそれでも笑理が、梢の両腕を頭上で押さえつけ、自らの足で梢の両足も押さえ、何度も唇を重ねていくことに対して、梢も次第に笑理の積極性を受け入れてしまった。

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