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その二

日曜日の午前は長閑なひと時で、梢は笑理の膝枕に頭を乗せて、ソファーで一緒にテレビを見ていた。笑理がチャンネルを変えると、ワイドショーが放送されており、そこには久子がコメンテーターとして出演をしていた。

「また出てるよ、西園寺久子」

笑理が舌打ちをして、不機嫌な顔になった。

テレビに映る久子は、相変わらず歯に衣着せぬ辛口コメントで、政治家の批判をしている。

「この女、政治家にでもなるのかな。そもそも、テレビ出すぎ」

「笑理、本当に西園寺先生のことが嫌いなんだね」

苦笑して梢が言うと、笑理はムッとして、

「大嫌い。梢だって苦手でしょ?」

「まあ、仕事の時も結構緊張するしね。苦手っちゃ苦手かな。友達にはなれないタイプ」

「じゃあ、私のことは?」

笑理が覗き込むように聞いてきた。

「言わなきゃ、ダメ?」

梢は照れながら呟いた。

「言って」

「……大好きだよ」

「よく言えました」

頭を撫でられ、笑理の顔が近づいてきたので、梢はそのまま笑理と唇を重ねた。

すると笑理は思い立ったように、

「ねえ、今日お昼、どっかランチ行こうか? 買い物もしたいし」

「良いよ」

「パジャマ見たくてさ」

「パジャマ?」

「梢とお揃いのやつ。それ着て今日から寝ようよ」

梢は嬉しくなって体を起こすと大きく頷いて、笑理に抱き着いた。


同棲してから初めてのお出かけは梢にとって楽しい時間で、笑理の手をしっかりと握り街へと赴いた。

笑理が襟付きの白シャツにネクタイとデニムジーンズというボーイッシュなコーデに対し、梢は水色のオフショルトップスに白のスカートである。もちろん二人とも、初デートの時に笑理が購入したお揃いのブレスレットもつけている。

ランチのハンバーグを食べた後、二人は近くの交差点でちょっとした人だかりができていることに気が付いた。

「あれって……」

二人の視線の先には、通行人たちと握手や写真撮影をしている久子の姿だった。

笑理は不機嫌そうに腕を組むと、

「もう、すっかり有名人気取りだね」

「あ……高梨部長」

一方の梢は、久子のすぐ後ろに高梨がいることに気が付いた。

「梢、行こう」

笑理に手を引っ張られ、梢はその場を去らざるを得なかった。

「私たちのことは、まだ高梨部長には言ってないんだもん。あのままあそこにいたら、面倒なことになるところだった」

「そうだね……」

笑理の言うことは一理あったが、それよりも梢は、日曜日に何故久子と高梨が一緒に出かけていたのかが気になっていた。

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