シャワーを浴びた後、梢は脱衣所にあるバスローブに身を包んだ。睡眠時はパジャマしか着たことがなかった梢にとって、初めてのバスローブだった。
ベッドのほうへ戻ってくると、先にシャワーを浴びた笑理が、同じようにバスローブ姿で小さく座り込んでいた。
「どうしたの、笑理?」
「ごめんね、さっきは」
「何で謝るの?」
梢は微笑むと、笑理の太ももの上に跨った。
「梢……」
「さっきは心の準備ができてなかったけど、今なら大丈夫だよ」
「良いの?」
「うん」
優しく梢が頷き、二人はそのままベッドに横たわった。
「梢って、前よりずっと可愛くなったね。いや、綺麗になった」
笑理に唇を撫でられて、梢は照れくさそうに微笑んだ。
「笑理といるんだもん、美意識ってうつるのかもしれないね」
笑理はまず、梢の額に一度キスをすると、そのまま唇、そして首筋にキスをした。笑理からの愛撫を受けている梢には、これまで感じたことのないゾクゾクした感触が襲い、思わず息が漏れてしまった。笑理は愛撫を続け、梢は鼻息を荒くしながらもグッとシーツを強く握りしめた。
翌朝、床には二枚のバスローブが落ちていた。
ベッドで笑理と体をくっつけて眠っている梢が、ゆっくりと目を覚ました。目の前に映る笑理は、まだぐっすりと眠っていた。梢はふと、昨晩の情事を通じて本当に笑理と結ばれたものだと実感していた。また、自分の手首のブレスレットと、笑理の手首についている同じものを見つめ、昨日のデートの余韻に浸っていた。
すると腕を伸ばして大きなあくびをしながら、笑理が目を覚ました。
「おはよう」
梢がささやくように言い、笑理も微笑んで、
「おはよう。よく寝たわ」
「朝風呂入ろうよ。ほら、浴槽大きかったじゃん」
「うん、入ろ」
浴槽の湯が溜まり、風呂に入った梢と笑理はお互いに足を伸ばした。
「あのさ、笑理。またデートしてくれる?」
「当たり前じゃん」
「やったー!」
梢は腕を高らかに上げた。これでまた、仕事をするための張り合いができたのだ。自然と笑みが顔に浮かんでくる。
「梢、ちょっとおいで」
笑理に手招きをされて梢が体を近づけると、そのまま笑理にキスをされた。
「おはようのキス、してなかったなと思って」
「じゃあこれからは、おやすみのキスもしてくれる?」
照れながらも梢が尋ねると、笑理は大きく頷いて、
「うん、ちゃんとする」
笑理に抱き着いた梢は、笑理との関係性が日に日に深まっていくことを何よりも肌で感じていた。