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その三

喫茶店の帰り道、梢と笑理はアンティーク雑貨店に足を運んだ。陶器やステンドグラス、ガーデニング用品、アクセサリー等、豊富な品揃えで、二人にとっては目の保養になっていた。

商品を見ていくうち、笑理はバラの花をあしらった合金製のブレスレットを見つけた。

「これ、二つください」

と、笑理は店員に頼み、ラッピングをしてもらった。ふと振り返ると、梢は物珍しそうに、陳列されている食器を眺めていた。笑理が梢の元にやってくると、

「何か、気になるものあった?」

「可愛い食器だなと思って。せっかくだから、二枚買っちゃおう」

「二枚?」

「笑理がうちに遊びに来てくれた時、お揃いの食器があったら良いでしょ」

梢は嬉しそうに言うと、金色のステンシル柄が縁取りされた白い皿を持って、レジへ向かった。


夕方になり、梢と笑理は水族館を訪れた。水中を泳ぐイルカをガラス越しに眺める笑理の横顔が美しく見え、梢は思わず見とれていた。そんな視線に気づいたのか、笑理は梢の方を振り向いた。

「どうした?」

「ううん、何でもない」

梢は慌てて首を横に振った。だが、それでも梢は、笑理の横顔を眺め続けていた。

一通り水族館を回り終わって外に出ると、辺りは薄暗くなり始めていた。

「ちょっと早いけど、夕飯食べに行こうか」

「うん」

「何食べたい?」

「ええ、何だろう。お肉かな」

梢が少し考えてそう言うと、笑理は手を一回叩き、

「肉バルとか、どう?」

「賛成!」

「ちょっと待ってね、すぐ調べるから」

マップアプリを起動させると笑理は歩いていき、梢も後に続いた。


土曜日ということもあり店は少し混んでいたが、数分待つとすぐに席へ案内された。

赤ワインで乾杯をした後、梢と笑理は注文した肉の盛り合わせやアヒージョを食べ始めた。

「美味しそうに食べるね、梢は」

「だって美味しいんだもん」

「そうやって美味しそうに食べる梢の顔、好きだわ」

じっと笑理に見つめられ、梢は照れくさそうにうつむいた。

「笑理だって、さっき水族館でイルカ見てたときの横顔、美しすぎたよ」

「そんなことないって」

「推しが尊いって、こういうこと言うんだろうなぁって」

「おんなじ言葉、そっくりそのまま返す。私にとっての推しは、梢だから」

ワインを飲んだことで、お互い饒舌になったのか、梢も笑理も雰囲気を楽しみながら食事を共にした。梢はもはや、笑理が部活の先輩であり、自分が編集担当をしている作家であることも忘れるほどだった。

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