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#4

 新たな力を解放したゴッド・オービス。

 セラフィック・モードの力により周囲に七色の光が放たれた。


『これは……っ⁈』


 その光のお陰で消耗していたゼノメサイアの体力が完全に回復したのである。

 快と英美はTWELVEの一同に感謝し共に並び立った。


『行こう瀬川……!』


「あぁ!」


 共に走り出すゼノメサイアとゴッド・オービス。

 一直線にアボミネンスへと向かった、自ら掴んだ愛を伝えるために。


「『おぉぉぉぉっ!!!』」


 目にも止まらぬ猛スピードでアボミネンスの周囲を動き回り目を覚まさせるための猛攻を繰り出して行く。


『ぐぅぅっ……⁈』


 何も出来ずにアボミネンスはただただ彼らの想いを受け続けていた。

 体を支えるエネルギーも尽きかけている。

 罪も浄化されておりもう反撃の術はない。


「いい加減目ぇ覚ましてよ新生さんっ!」


 蘭子の声と共に拳を突き出すゴッド・オービス。

 その拳は思い切りアボミネンスの顔面に突き刺さった。


『ぐあぁぁぁっ……⁈』


 そのまま勢いよく空へ吹き飛んでいく。

 その隙を彼らは見逃さなかった。


『さぁ行こうみんな……!』


 ゼノメサイアとゴッド・オービスは一斉に飛び上がる。

 そして両者とも愛のエネルギーを最大限に解放し新生の魂に向かって放った。

 オービスが背中を支えエネルギーを送る。

 そしてゼノメサイアがコアから一気に愛を与えた。



『アンリミテッド・グレイス』



 限りなく尽きる事のない愛情が注がれる。

 新生は一気にそれを全身に浴びた。


「くっ、今更こんなもので……!」


 しかしそれでもまだ彼は拒絶を続ける。

 だからこそ彼女が動いたのだ。


「まったく贅沢な奴ね」


 自らの内からまた咲希の声が聞こえた。

 今度は何をすると言うのだろうか。


「ま、まさか聖杯の力で……!」


「そう、無理やりにでも受け取りなさい!」


 新生が取り込んだ天の聖杯。

 それは自ら無理やり愛を受け取る事に用いられた。


「あぁぁぁっ、これが……!」


 徐々に心が満たされていくのが分かる。

 感じた事がないほど温かい愛情に包まれていた。


 ___________________________________________


 この場にいた者たち、ゼノメサイアとゴッド・オービスとレ・アボミネンスの精神世界で一同は遂に会合した。

 直接向き合って新生に想いを伝えて行く。


「聞いて下さい、みんな貴方と一緒に生きたいんです。だから迎えに来ました」


 まずは快から先頭に立つ。

 しかし新生は愛を受け取って尚それが信じられなかったようで。


「何で……何でそこまでしてくれるんだい?僕はこんなに多くの罪を……」


 次は瀬川が出て来た。

 彼も自分で伝えたかった事を伝える。


「罪を反省して悔い改めれば愛する人はきっと赦してくれる」


 父親や快を見て来たからこそ言える事であった。

 膝から崩れ落ちてしまう新生。


「でも多くの人は赦してくれないだろう、きっと辛い罰が待っている……世界は僕を必要としていないっ」


 そして次は蘭子が登場した。

 竜司や陽も続いて現れる。


「辛い時は辛い、幸せな時は幸せ。それで良いじゃん、どっちかだけなんて事はないよ」


「罰は仕方ないけど愛してくれる人がいれば居場所になるんすよ、その人たちのために生きて下さい」


「僕も自分なんか必要ないって思ってました、でもそんな事決められないんです。世界にとって必要である意味がない」


 そのまま背後から名倉隊長も現れた。

 TWELVE隊員たちは全員で新生に寄り添ったのだ。


「誰もが誰かを愛し愛されてる。その人にとってはきっと必要って事だから……応えて下さいよ」


 すると目の前に次は咲希が現れた。


「大事なのは相手を選ぶ事なんだと思う、苦手な相手だって不快に思う相手だって生きてて良いんだ。嫌なら関わらなくて良い、その人にはその人の関わるべき人が居るはずだから」


 そしてもう一度快がやって来て結論を伝えた。

 この世で学んだ事、その全てを伝えるのだ。


「貴方は多くの人に嫌われたかも知れません、でもそんな貴方を愛して支えたいと思ってる人はここにいます」


 現世では常に人々が人種も関係なく支え合っている。


「その歩み寄る気持ちを伝えていけばどんどん愛情は巡り巡って世界を一つに繋げてくれますから!」


 彼が望んだが成し得なかった事の真実を伝え、快は新生の肩を優しく叩いた。


「恐れている人達もきっと貴方の素晴らしさに気付いてみんな優しくしてくれる、元は誰もが良い人なんですよ」


 そして新生が顔を上げ快と目が合ったタイミングで、快はしっかりと本質を言う。


「人と人との間を繋げて行く、だから人間って言うんですよ!」


 "人間"という言葉が持つ本当の意味を語った後。

 彼らはゼノメサイアとして新生の抱く核や罪、彼そのものと言える全てを抱きしめに行った。


「ありがとう、ありがとう……」


 涙を流しながら感謝をする新生に一同は伝える。

 代表して快が手を差し伸べた。


「おかえりなさい!」


「あぁ、ただいま!」



 その手を新生は力強く握り締めた。

 同時に全てのライフ・シュトロームが解放される。

 それらは現世でも不思議な現象を引き起こした。


「すげぇ……!」


 市民たちはその現象を見て心を奪われる。

 愛里も思わず微笑んでしまった。

 ・

 ・

 ・

 彼らが想いを伝え合った場所。

 そこに新たな生命の樹が誕生したのだ。

 大きく聳え立ち人々を見守るように。


「おぉぉぉっ!」


 人々は歓喜した。

 障害者も健常者も人種も何も関係なく近くにいた人々を心を一つにし喜びを分かち合ったのだ。


 ___________________________________________


 そしてここは新たなる生命の樹の中。

 TWELVE隊員たちとゼノメサイアの三人、そして新生がそこにはいた。

 景色は青い空が見下ろすカナンの丘である。


「新世界……本当に僕も行って良いのかい?」


 今一度彼らと共に生きていいかを確認する新生。


「当たり前じゃないっすか!まぁ外には出られないかも知れないけど会いに行きますよ」


 竜司の言葉は新生が逮捕されてしまう事を表していた。

 それは彼自身も覚悟している。


「元より覚悟は決まっていたよ。だから快くん、本当に君は良いんだね?」


 その言葉の意味。

 新生は既に気付いていた、自分の代わりに新世界の核になる者に。


「え、どういう意味だ……?」


 しかし瀬川を始めとする他の一同は気付いていない。

 その意味が分からないまま彼らの話は進む。


「もちろん、覚悟は決めてましたから」


 そう言った快はまるで手品のように樹ノ剣と海ノ剣を出現させる。

 それに加えてもう一つ、罪ノ剣も出現させた。


「おい、何する気だ快……⁈」


 その途端、空間から瀬川たちの意識が外へ出て行きそうになる。

 しかし快はそのままだ。

 その意味を察したのは咲希もである。


「アンタ、いるんでしょ」


 そんな咲希は外へ出される前に木の陰からこちらを見ている英美に声を掛けた。


「え、咲希さん……」


 英美は少し恥ずかしそうにしながら咲希を見る。

 そして咲希はハッキリと思った事を告げた。


「見違えた、アンタ凄い奴だったんだね。前は見下してたけど……」


「ううん、全部彼らのお陰」 


 しかし英美は自らの力だという事を否定した。


「彼らが示してくれたから私も変われたんだよ」


 すると咲希も一言。


「あぁ、アタシもそうだった……じゃあね」  


 そして意識が消える中で咲希は英美とまだ話したかったと後悔していた。

 そんな中で最後に聞こえた言葉は英美の一言。


「咲希さん、愛里をよろしく」


 その声と共に咲希の意識は外へと出された。

 そして瀬川たちもここにいるのは限界だった。


「おい何だよ、お前何すんだよ!」


「ごめん、土壇場で色々決まったから……」


 快は謝るが瀬川は納得が行かない。


「せっかく一緒に夢叶えられたと思ったのによ!」


 しかしそれに対して快は優しく微笑みながら答えた。


「大丈夫、これからはいつでもどこでも一緒だ」


 それは快が新世界そのものになるという事。

 しかし瀬川はそんな事は望まない。


「おいふざけんな!一緒に行くんだよ、快ぃぃー!」


 そのまま快と英美以外全員の意識が外へと出た。

 その場に残された二人は少し話す。


「良かったの?最後のやり取りがこれで」


「最後じゃない、ずっと一緒って言ったろ?」


「そうだったね」


 三本の剣を構える快。

 その力により周囲の景色は変化していく。


「あぁ凄い、世界の記憶が変わって行く……」


 映像だけで分かった。

 世界の記憶が書き換えられて行くのが。


「あ……」


 その中で快はある記憶を見つける。

 それはゼノメサイアと出会う前の自分が孤独に過ごしている記憶。

 病院の待合室や不良に絡まれた時など。

 孤独に苦しんでいるかつての自分の姿を見た快はその映像が流れる方へ無意識に足を進めて行く。


「あの時の俺……」


 そして優しく記憶に触れながら呟く。


「今は辛いかも知れない、でもこの試練を乗り越えれば愛に溢れた幸せを掴めるから。だから……」


 全ての記憶へ。

 過去の自分へ正直な想いを伝える。

 その言葉とは。



「君は大丈夫だ、安心して」



 そう告げた途端、記憶の中にいる自分が何やら少し反応を見せたような気がした。

 その意味を快は一瞬で理解する。


「そうか、俺も俺を導いてたんだ……!」


 ・


 ・


 ・


 そして遂に新世界への扉が拓れる。

 外の世界では新たな生命の樹を中心にゼノメサイアが出現し三本の樹を周囲に構えた。


 そのまま背後で罪ノ剣が十字架と化す。

 ゼノメサイアは両手を広げそれを背負った。

 そして樹ノ剣と海ノ剣は変形し釘のような姿へ。


『これが、ラスト・ジェネシス』


 そのまま両手に剣は突き刺さる。

 磔になったゼノメサイアは新世界の核として未来永劫、人々と共に在り続けるのだった。






 つづく

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