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#3

 快と英美はカナンの丘に戻って来ていた。

 そして空間の澱んだ空に亀裂が。


「やってくれたみたいだ」


「うん、じゃあこれで後は……」


 英美は快に任せなければいけない事を少し寂しく思った。

 本来ならば自分がゼノメサイアとして戦って来たはずだと言うのに。


「何言ってんだよ、君も一緒に」


 しかしそんな英美に快は手を差し伸べる。


「え……?」


「出来る事、まだあるよ」


 そう告げて快は思惑を伝えた。


「今は俺がゼノメサイアだ、そして君を選んだ」


 その言葉を聞いた英美は目頭が熱くなるが今はグッと堪えて覚悟を決める。


「うん、行こう」


 そして力強く快の手を取った。

 二人は完全に歩み寄ったのだ。


「みんなが待ってる……!」


 そして空が割れ光が刺していた。

 そこに向かってゆっくりと歩みを進めていく。

 その彼らはまるで世界そのものに歩み寄っているようだった。


 ___________________________________________






『ヒーローに、ならなきゃ。』





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 現世が眩く輝いた。

 破壊されたアボミネンスのコアから漏れ出た光が天に昇り降り注ぐ。

 それと共に全ての罪は浄化され、罪獣たちは姿を消した。


『オォォォ……』


 その光の中から現れたのは巨大な赤銀の巨人。

 逃げ惑う人々、助け合う人々は巨人の出現に圧倒されていた。

 その中で愛里は口を押さえて感動している。


「〜〜っ」


 そして共に戦う仲間たちも。


「快っ……!」


 ゴッド・オービスのコックピットで瀬川は涙を流す。

 しかしこの巨人、ゼノメサイアは今回は一人ではなかった。


『これが、私の変身……』


 初めてゼノメサイアへと変身した英美は自身の姿に驚いていた。

 しかし一人ではない、これまで戦って来た快も共にいてくれる。


『……コクッ』


 そして快として一度振り返りゴッド・オービスを見た。

 安心させるように力強く頷いてみせた。

 TWELVE隊員たちも感極まっている。

 その中で唯一、新生は誰よりも驚愕し焦っていた。


『母さんっ⁈ どこに行ってしまったんだ⁈』


 罪獣であった母親は快の力で浄化された。

 しかしそれを上手く飲み込めず新生は焦り続ける。


『何故っ⁈ 何故蘇った⁈』


 その声を聞きアボミネンスを……いや、新生の方を向くゼノメサイア。


『まさかゲートが拓いている……⁈』


 ゼノメサイアから放たれる凄まじくも温かいオーラを感じ取ったアボミネンスは動揺したが必死に自分を落ち着かせようと言い聞かせた。


『しかし所詮は一人分のゲートに過ぎない、二人分拓いている私には……!』


 既にバベルや罪ノ剣はないため純粋なゲートの恩恵のみを振り翳し突っ込んでいくアボミネンス。


『ハァッ!』


 しかしゼノメサイアはその攻撃を簡単に片手で防いだ。


『なっ……⁈ 何故一人分の力で……』


 そこで新生は気付く。

 直接触れた事で彼"ら"が受けているゲートの恩恵を感じたのだ。


『まさか……誰か居るのかい⁈ そこにもう一人⁈』


 英美の存在に気付いた新生。


『そう、俺だけの力じゃない……!』


 快はこれまでのゼノメサイアとして新生に語りかける。


『俺を導いてくれた英美さんが居てくれるっ!』


 英美の存在を明かしゼノメサイアは思い切りアボミネンスを右拳で殴り飛ばす。

 予想外の衝撃で思い切り後方へ吹き飛んでしまった。


『ぐぅぅぅ……⁈』


 しかしそのお陰でゼノメサイアの力量を測る事が出来た。

 アボミネンスは体勢を立て直し拳を構える。


『ヴォアッ!』


 その様子を見たゼノメサイアは心の中で覚悟を決めるのだった。


『新生さん、帰りましょう。力づくでも連れて帰りますっ……!』


 それに合わせてゼノメサイアも拳を構える。

 真の最終決戦が遂に幕を開けたのである。


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 両者は互いから目を離さずに全力で走り出す。

 そのまま思い切り拳を突き出した。


『ゼアッ……!』


『ヴゥゥッ!』


 拳が正面からぶつかり合い辺りに衝撃波が伝う。

 見ている者たちにも風圧が届いていた。


『ハァッ!』


 そのまま流れるように後ろ回し蹴りを繰り出すゼノメサイア。

 アボミネンスは両腕でそれを受け止めるが横に飛ばされてしまう。

 しかしそれでも一瞬で体勢を整えたアボミネンスは更に追撃をしようと向かって来るゼノメサイアにカウンターを喰らわせた。


『ヴェアァッ!』


『ゥグッ……』


 更に追撃を加えようとするアボミネンスだがゼノメサイアも段々と見切って行き反撃を繰り出す。

 そのまま両者の拳や蹴りは激しくぶつかり合い全く互角の様子を見せる。


『セェヤッ!』


 そのまま両者とも勢いよく飛び上がり空中戦が始まった。

 激しく空を駆け抜け両者はぶつかり合う。


『ヴゥンッ、ヴォアッ!』


 一度離れた隙に黒い光弾を放つアボミネンス。

 しかしゼノメサイアはそれを軽々と避けアボミネンスの脳天に踵落としを決めた。

 しかしその程度でアボミネンスは怯まない。

 脳天に突き刺さった足を両手で掴み思い切り投げ飛ばしたのだ。


『グゥオォォォッ……⁈』


 とてつもない遠心力で落下していくゼノメサイア。

 地面にぶつかったり時の衝撃は計り知れなかった。


『ッ……⁈』


 しかし休む間もなく急降下してくるアボミネンス。

 そのままゼノメサイアの腹部を踏み付けるように着地した。

 それがかなり効いてしまったようでそこからゼノメサイアの動きが明らかに鈍る。


『グハッ……』


 無理やり起き上がらされ何度も顔面に拳を打ち付けられる、倒れる度にそれを繰り返されてしまった。


『ハァ、ハァ……何故君たちはここまでっ』


 渾身の一撃を加えた後、片膝をついて倒れるゼノメサイアを見ながら新生は息を切らした。


『くっ、はぁっ……』


 快も英美も共に苦しんでいた。

 何とか立ち上がろうにも全身が痛みを覚え倒れてしまう。

 完全に動けないゴッド・オービスの中で瀬川たちも焦っていた。


「クソッ、俺たちが動けたら……!」


 しかし冷静な蘭子はその考えの甘さを指摘する。


「無理だよ、あんな次元の違う戦いに入るなんて足手纏いにしかならない……」


 それでも瀬川たちは黙っていられない。


「だからって……!」


 もどかしいのは蘭子も同じだった。

 時止主任に託されたカードキーを見つめながら蘭子は悩む。


「(どうすればいいの……⁈)」


 考えれば考えるほど焦ってしまい何も浮かばない。

 このまま万事休すなのか、そんな事あっていいはずがない。


 ……すると地上から戦いを見つめる人混みの中から声が響いた。


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「がんばれぇー!」



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 静寂の中、子供のような声だけが響く。

 絶望していた人々、TWELVEの隊員たち。

 そしてゼノメサイアまでもがその声に気付いた。


「がんばれっ、がんばれー!」


 涙ながらにその声援を放っていたのは一人の小さな少年だった。

 彼には見覚えがある。


「ゼノメサイアは助けてくれたんだっ、ヒーローなんだ!絶対勝ってまた助けてくれるんだっ!」


 快と英美は思わず声を重ねて少年の名を呟いた。


『リク君……っ⁈』


 その少年は初めてゼノメサイアとなった日、英美と出会い道を示された日。

 共にいたリク君だった。

 彼のその後が気がかりだったが今まさにこの場で応援してくれている。


「そ、そうだっ……がんばれゼノメサイア!」


 するとリク君に呼応して周囲の人々も応援を始める。

 その声はすぐに伝染し街中から響き渡るほどとなった。


「がんばれ!」


「負けるな!絶対勝て!」


「お願い立って!」


 思い思いの声援を浴びせる人々。

 快の夢や境遇を知っていた愛里はその中で感極まっていた。

 だからこそ共に声を大きく応援したのだ。


「快くんっ!がんばってー!」


 もう正体の事など気にしていられなかった。

 とにかく愛する人に声を届けたい一心だったのだ。


「立て!勝てっ!」


「がんばってゼノメサイアーッ!」


 障害者も健常者も関係ない。

 これまで差別をして来た人達、喫茶店の西野や学校の山口など。

 そして山口の隣には委員長もいた。

 想いを共にしゼノメサイアを応援している。


『みんな……っ』


 思わず一粒の涙を流してしまう快。

 その様子を瀬川も察していた。


「快っ、お前本当にヒーローに成ったんだな……!」


 ずっと応援していた親友の夢が叶った瞬間。

 それを強く実感していた瀬川。

 視線の先でゼノメサイアは力を込めている。


『ゼアァァァッ……!』


 気合いを入れて叫ぶゼノメサイア。

 そして勢いをつけて何とか立ち上がった。


「「「おぉぉぉーーーっ!!!」」」


 その勇姿に人々も呼応して声を上げる。

 世界中が一つに繋がった瞬間である。

 Connect ONEその意味をまさに体現したのだ。


『新生さん見て下さい、こうやって世界は一つに繋がれるんです……!』


 立ち上がったゼノメサイアはアボミネンスの奥にいる新生をしっかりと見つめながら伝える。


『くっ……』


 認めたくないような雰囲気の新生だが明らかに揺れているのが分かる。

 その様子を見たTWELVE隊員たちは遂に覚悟を決める。

 竜司が優しく蘭子に囁いた。


「蘭子ちゃん、俺たちも行こう」


「え……?でも機体が……」


「まだ手段はある、分かってるはずだよ」


 竜司も全てを察していた。

 蘭子が時止主任に託されたカードキーを握りしめている事を。


「……うんっ」


 そして遂に蘭子も覚悟を決める。

 託されたカードキーをコックピットの挿入口に思い切り挿した。

 その途端モニターに現れる文字の羅列。

 "SERAPHIC MODE"と書かれたその画面を思い切り叩き新生を救うための力を起動した。

 遂に心が一つとなったのである。


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 ゴッド・オービスの機体に変化が。

 余計な枷が外れて行く。

 外装甲がどんどん剥がれて行きエネルギーそのものが全面に剥き出される。


「これは……⁈」


 予想以上の強力な光に一同は驚く。

 しかし凄まじいエネルギーを感じ立ち上がった。


「これが新生さんを救う力、愛を届ける力……!」


 ゴッド・オービスの真価。

 "セラフィック・モード"である。

 この力を駆使して彼らは愛を届けに向かうのだった。






 つづく

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