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第55話 韓国学園とチョーコー、血の同盟 その12

「それによぉ・・・・・・」


キムは、右手で握りつぶしたグチャグチャになったタバコを地面に捨てて立ち上がった。


「その後輩たちに見せてあげるべきじゃねーかな。今の若い世代の在日達で作る朝鮮統一ってヤツをよ」


キムは、ズボンの両ポケットに手を入れて少し上を向いた。


「上のおっさん達もよく言ってるが、ほんとにできんのかね?俺には夢物語にしか思えんね。お前らの上にいる、朝鮮総連とか民団を嫌って対立ばっかしてるじゃねえか」


ハンは否定した。

もちろん、朝鮮統一は朝鮮民族の悲願であり、自分もそういう願望はある。

キムは、否定したハンに顔を向けて言った。


「朝鮮総連とか韓国民団とか、そんな大人の都合は、俺たち若い世代にとってハッキリいってどうでもいい。大事なのは、今の俺たち現役世代の気持ちじゃねえか?」

「・・・・・・」


その言葉に無言で答えるハン。

キムは続けた。


「今、韓学とチョーコーがこうして未成年の癖にタバコ燻らせて未来について語り合ってるんだぜ。出来ねー訳ねーさ」


そう言い切ったキム・ブントクの顔は、笑顔であった。

2人のやり取りを他のチョーコー生たちと岸本も聞いていた。


「へっ・・・・・・未成年はよけーだわ」


キムと同様にハンも立ち上がった。


「若い在日による敵地日本での朝鮮統一宣言ってか。カッコつけすぎだぜお前」

「・・・・・・」

「でも、見てみてーな。生きてるうちに祖国が統一する姿をよぉ・・・・・・」


両手でリーゼントの髪を整えるハン。


「見たいんじゃない。見せるんだ。これからの後輩たちの為に」


ハンは、キム・ブントクの後ろ姿が異様に大きく見えるのを感じた。

ハンも、それが彼の大言壮語だと分かっているが、この男なら、そういう難題も何とかできそうな・・・・・・。

そう錯覚させてくれる存在に、この短時間でなっていた。


「なぁ、ハン」

「なんだ?でっけえ夢をまだ語り足りないってか」

「俺は数年後には、北朝鮮に渡って一旗揚げようと思ってるんだ」

「まじか!?」

「ああ、まずはチョーコー卒業したら親戚の叔父さんが金融会社やってるからな。そこで経済の勉強をしようと思ってる」

「経済か・・・・・・」

「今の時代は、武力より金、経済力がある国が世界を制すと思ってる。ドイツや日本を見てみろ。朝鮮戦争特需のおかげもあるが、敗戦国として国が荒廃した状態から、今や経済という分野に限れば、世界のトップクラス。経済さえ伸びれば、軍事含めたあらゆる方面に転用が可能だ」

「まぁ・・・・・・確かにそうだな」


ハンは感心した。

まさに目から鱗だった。

ただ目の前の喧嘩に明け暮れていた自分とは、この男は、見てる次元が違ったのだ。


「北朝鮮に渡ったら、経済の分野から北朝鮮を支える。そして、朝鮮半島全体を豊かにする。それが俺のもう一つの夢だ」


ハンは、何故キム・ブントクがチョーコーの番を張っているか、今分かった気がした。



一週間後、キム・ブントクの志に賛同した、韓国学園とチョーコーによる血判状による朝鮮統一同盟が、三鷹の焼肉店「ハンガン」の一室で結ばれた。

もちろん、朝鮮総連や韓国民団には内密に行われた。


韓国学園側は、香山三兄弟とハン・シュウイチ。

チョーコー側は、キム・ブントクとキム・ジュンキ。そして、キム・ジソンの金三兄弟が同席したのだった。


血判状に署名後、韓国学園とチョーコー同士によるトラブルは沈静化。

金三兄弟と韓国学園のごんたくれが共に都内を徘徊し、日本人の不良学生や族を相手に大いに暴れまわるようになる。

都内を歩いてたら、敵対関係にあった韓国学園とチョーコーの不良同士がつるんでいるのである。

まさに、鬼に金棒。

さぞかし、東京の不良たちにとっては悪夢であっただろうことは想像に難くなかった・・・・・・。

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