全力で三鷹駅ホームを走るハンと岸本。
それを同じく全力で追いかける蛇腹3人組。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
ハンと岸本の息が荒くなる。
その2人の目の前に改札が見えてきた。
「どけどけどけー!」
ハンが改札の前に並ぶ行列に怒鳴る。
その声に驚く駅の利用客たち。
「ちょ、ちょっとお客さん!」
改札にいた切符切りの駅員のおっさんの静止を振り切り、改札を無賃乗車で突破するハンと岸本。
それを追う蛇腹3人組が改札前に突入しようとする。
「てめぇ!邪魔だ!コラァ!」
山内たちが改札に溜まっていた利用客をハンたち同様どかそうとするが、既にハンたちによって綺麗に並んでいる列がグチャグチャになったせいで、うまく改札を突破できず、改札前で怒号を飛ばしながら利用客に混ざりグチャグチャになっていた。
「ちっ、逃げられた」
山内は、三鷹駅前入り口に立ちながら舌打ちした。
(今度会ったら、コレで太ももグサッと刺しちゃる)
山内は、懐に忍ばせた短刀を蛇腹の上から撫でるように触った。
山内の様に、国士館高・大生は、喧嘩の時の為に、常に短刀を懐に忍ばせているごんたくれが多数いた。
喧嘩はステゴロを信条とするチョーコー生と違い。
国士館の喧嘩は武器やら集団・奇襲など何でもありの喧嘩であった。
短刀による攻撃もその1つで、駅を歩いているチョーコー生の背後からいきなり背中をブスッと刺してくるのも国士館の常套手段であった。
背中や腹を突然刺され、亡くなったチョーコー生も数人いた。
国士館側も、さすがに殺人をする度胸まではなかったようで、チョーコー生がなくなったり重傷を負ったことを知ると、それ以降は太ももを刺す攻撃に変わっていった。
チョーコー生も、腹に新聞紙を何重にも巻いて通学したりと、短刀対策をして学校に通っていた。
ただの通学が、まさに命がけである。
話を戻す・・・・・・。
その蛇腹3人組を、数十メートル後ろから眺めている1人の男がいた・・・・・・。
「はぁはぁはぁ・・・・・・」
ハンと岸本は、三鷹から1キロほど離れた路地裏に座って息を整えていた。
「ほれっ」
「え?これって」
「タバコだよ。みたことねーのか?」
「お、おれはいいよ」
「そっか」
煙草に火をつけるハン。
タバコをふかすハンを見ながら岸本は言った。
「国士館に目つけられたけど、明日からどうするよ・・・・・・」
「ん~。さすがに蛇腹相手は俺1人じゃ無理だからな~。韓学は人数すくねえし。明日から数週間は三鷹駅は避けるしかねえな~」
「ま、まじかよ~」
岸本は絶望した。
不良などという世界とは無縁だと思っていた自分が、まさか天下の国士館に目をつけられるようになるとは。
まさに一寸先は闇である。
そんなやりとりをしている時だった・・・・・・。
「おらぁ!士官舐めんなよ!」
「!!」
路地裏に、男の大声が響き渡った。