「なんだおめぇ!?」
3人組は、自分たちの前に来たハンに気づいて、ドスを効かせた声で反応した。
ハンは、その声を無視するように、涼しい顔でこう命令した。
「邪魔だ、どけよ」
出入り口ドア付近でそれをハラハラしながら見ていた岸本は、このまま喧嘩になるのでは?と焦った。
3人組相手に一歩も引く気を見せないハンに、3人組は明らかに動揺していた。
「おい、行くぞ・・・・・・」
大股で座席に座っていた3人組は、スゴスゴとその場を離れ、隣の車両に移っていった。
それを見届けたハンは、岸本に顔を向けて満面の笑みでこう言った。
「きしちゃん!席が空いたから座ろうぜ」
「お、おお」
3人組の不良相手を退かせたときは真逆の笑顔だった。
空いた座席に座り、10分ほどが経った。
既に3人組は、電車から逃げるように降りていた。
一方、ハンと岸本の会話は弾んでいた。
久しぶりの再開なのも大きかったが、ハンが意外とおしゃべりだったのもあり、会話が途切れる事はなかった。
もう少しで三鷹駅につきそうだ。
そんな時だった。
「これはこれはカンガクのチョンさんじゃないですか!」
3人組が消えた車両の反対側から、蛇腹を着た3人組が現れた(今日は3人組に縁があるらしい)。
(げ、国士館じゃん)
岸本は、助けを求めるように、急いで隣のハンの顔を見た。
ハンは、明らかにまずそうな顔をした。
(どうする青木・・・・・・)
岸本は、小声で青木に尋ねた。
「・・・・・・」
ハンは、それに答えず、ただ黙って腕を組んでいた。
ドカァッ!
座席を蹴りながら、近づいてくる国士館3人。
その挑発を無視する2人。
(逃げるぞ、きしちゃん)
岸本の顔に近づいたハンは、小声で国士館からの逃走を提案。
(あ、ああ・・・・・・)
喧嘩に自信のある韓学のハンも、国士館相手は分が悪かった。
喧嘩する時もあるが、それは相手が1人の時がほとんどで、複数いた場合はいつも走って逃げているという状況であった。
今回の相手は3人。
逃げるが勝ちであった。